2話 VMOアプリ

「そのアプリ…何?」



「VTuber御用達の配信アプリ

『Voice on model』だよ!略して『VOM』!

VTuberならみんな使ってるんだから!」



「VOM…」



私は彼女からスマホを受け取って画面を見る。


VTuberの配信をとても簡単にできるアプリということらしい。

私は説明を声に出して読む。



「『VTuber目指すなら必須アプリ!DL数ナンバーワン!

100万人突破したら、君は永遠にVTuberとして名を残すことができる!』」



その触れ込みは人気を出したいと夢見る少年少女たちには、

とても甘美な言葉に聞こえるだろう。


でも…こういう甘い言葉というのは…


…まぁその…怪しい。



「ひどーい!ここに成功者がいるのに疑うの!?」



天莉は信じていないと思ったのか、私に抗議をする。

自分の使ってるおすすめアプリをそんなふうに言われて怒るのはわかるけど、

売り文句だっていうのはわかるけど…



「いや、だって…アプリ使っただけで、そんな上手くいかないでしょ?

これさえ使えば…ってなんか…綺麗事すぎない?」


「そんなことないよ、

ほんとにこのアプリ使ってる人のチャンネル登録者数みんなすごいんだから!」


「そうなの?」


「そうだよ!ほらっ!」



天莉はそういうと、このアプリを使っているVTuberの名前を一人ずつ上げていく。

確かにその名前は誰もが知ってる有名な人ばかりだった。


それを聞くと、ちょっと信憑性が増す気がする。

天莉はまだ話を続ける。



「それにね、ちゃんとシステムもすごいんだよ!

ボタンひとつでMeTubeの配信簡単にできるし、録画も簡単!

しかも、3Dモデルが簡単に作れるの!自由度も他のアプリの比じゃないよ!」



そういうと、天莉は今度は自分がDLしてるアプリを見せてくれる。


まぁ、確かに操作はかなり気軽で簡単で、誰にでも出来そうではあった。

キャラクターメイクも自由度が高い割に、操作はかなり簡単。


悪いアプリではなさそうかも。



「それにね、AIが動画の分析でアドバイスとかもしてくれるんだ!

ね?だから真由美も…」



天莉が言葉を続けようとした瞬間、


キーンコーンカーンコーンと予鈴のチャイムが鳴った。


本当はもっと魅力を伝えたかったみたいだけど、

みんなワラワラと自分の席に戻っていくので、それ以上は諦めた。


その代わりメモ帳を取り出して何か文字を書くと



「これ、私のチャンネル。

そのアプリ使って撮った動画ばっかだから、よかったら動画見てみてね!」



と言って、メモを渡し自分の席に戻っていった。


そのメモには『甘々ボイス♡リリーちゃんねる』と書かれていた。

もう名前からして、自分のチャンネルの名前であろうことは想像ができた。


ちゃっかり自分のチャンネルの宣伝をしていくあたり抜かりがない。


私はため息をつくと、もう一度勧められたアプリを、自分のスマホで確認する。



これが天莉が使ってるアプリかぁ…



動画配信サイト『MeTube』で50万人…

目標が100万人…折り返しかぁ…


収益も結構出てるんだろうなぁ、このアプリを使っただけで、本当にそんな結果が出るものなのだろうか…



「でも、どんなにすごいアプリ入れてたって、

面白い動画を配信してないと、そんなに登録者行かないよね。」



やっぱり簡単に配信ができたというだけで、実際は天莉の実力なのは間違いないだろう。

ちょっと気になるなぁ…天莉のそのチャンネル。

一体どんな動画を配信してるんだろう。


今音は流せないから、内容はわかんないけど、

チャンネル名で検索して出てきたサムネイルは…かなり可愛い画像になっていた。


後で見てみようかな。

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