幕間1

一話 神々と王族

 さて、魂を輪廻の輪へと還す神さまがいたとする。

 決まってあなた方が死ぬ時に寄り添い、その命を刈り取る存在だ。理とも言えるかもしれない。

 では、その理は悪だろうか? 善だろうか?

 ……と、理に善も悪もないのは確かだろう。リンゴが木から落ちるのも、音が光を超えられないのも、箪笥の角に小指をぶつけたら痛いのも。

 ……最後のは違うか。

 まぁどっちにしろ、理に善も悪もない。ただ、それが最初から存在する設定であり、それに逆らうことなどできないのだ。

 普通なら。



 人の世では、神々は三つの勢力に分かれているらしい。善神、悪神、傍観神と。

 では、それは本当なのだろうか? 

 人とは意味あり真実を好み、意味なし事実を嫌う種族だ。こと何かにつけて、意味はあるのか、こういう想いだったのではないか、必然であるのか……

 つまり、何かを求めてしまう存在だ。求めないことすらも求めてしまう存在だ。

 ならば、神々が三つの勢力に分かれていることは、事実だろうか? それとも真実だろうか?

 

 結果を言ってしまえば、最初は真実だった。空想であった。

 しかし、神々も時にある存在だ。時という概念を必ず押し付けられる存在だ。御柱にも流れは存在する。

 そりゃあ、下から上に流れるかもしれないが、流れるという理そのものに変わりはない。まぁ運動だけで見れば流れは存在しない……らしいが。たぶん。

 まどろっこしい言い方になったが、においては三つの勢力に分かれている。人の真実が事実になったのだ。


 神々は理そのものではあるが、しかし神々意思という理を内包しているのも確かだ。

 そのため、思考をする。思考をするということは、それすなわち人と同様真実を求める存在なのだ。

 事実たらんとしなければならない存在が、真実を求めるなど滑稽そのものだが、その滑稽自体も理だとしたら仕様がない。


 ということで、神々について説明する。


 分かりやすくいこう。

 神々はとある企業世界で働いている。企業主義万歳で、神々は特定の企業に属さないと一生を生きていけない存在なのだ。終身雇用どころか、永神雇用なのだろう。

 ……終身雇用があるということは年功賃金制度を導入しているのか気になるが、置いておこう。

 まさか、忠誠的精神と不特定の無限的労働力だけ搾取して、何も還さない市民生活を保障しないとなると、ブラックすら真っ青になってしまうほどの闇だ。ブラックって真っ青になるのだろうか?


 それはさておき、その企業世界で働く神々には仕事が与えられている。

 その仕事は大事だ。それが一つでも欠ければ、企業世界が倒産してしまうからだ。

 いや、倒産できるならいい。倒産した方が失わない場合も背負わされない場合も多いし。万が一の時は早めに倒産した方がいい。

 ということで、企業世界は倒産できない。責任と借金となんか知らないレッテル批判を背負わされるだけだ。ついでに、プラス要素を全て失う。

 だから、仕事をたった一柱に任せることはない。大抵、三柱か四柱くらいに分かれる。時たま、二柱だったりするが。

 つまり部署があるのだ。部署が。ただ、三、四人しかいない部署なので一番偉くても係長しかいないのだが。

 いや、一番偉いということは部長では? と思うが、まぁ庶民で見れば係長が一番偉い。うん。

 そして部署であるから、部署内の人が全て同じ仕事をしているわけではない。当たり前だ。全員が同じ仕事を進めるのではなく、分担している。

 実務をやるのが平社員。つまり系譜神。管理、つまり係長がそれを象徴する神。

 実例を上げれば、戦いと慈悲の神シュラセトリディアが係長、剣と盾の神クシファピタは平社員だ。

 

 じゃあ、善神と悪神と傍観神とは何かである。

 まず三つの勢力に分かれているといったが、正確には二つの勢力である。悪神か、それ以外かである。


 では、悪神は何かである。

 これは本当に簡単だ。彼らは、企業に辞表を突きつけ、自営業をやっている平社員か、もしくは係長だ。部署全体ではない。阿呆なことをしている個柱なのだ。

 と、気になるのは何故そんな阿呆な事をしているかだ。企業主義だから、企業に属さなければ生活がままならないはずだ。

 けれど、そんな事をするのには理由がある。簡単で多くの者にはできない理由。

 ムカついたからである。やっていた仕事がムカついたから。俺の方が、私の方がもっといい仕事ができるからと、思ったからだ。

 だから、彼らは企業世界に逆らったのだ。

 それが悪神。設定を悪と定めた者なのだ。真実を求めた者なのだ。

 

 ということで、善神と傍観神は企業世界に属している柱の事をいう。

 では、彼の柱たちの違いは何か?

 こっちも簡単だ。残業万歳善神か、定時万歳傍観神かだ。

 けれど、だからこそ、この二つには大きな違いがある。

 いや、傍観神だけ外れていると言えばいいか。善神も悪神も仕事に従順か、反抗的かという勢力の違いがあるが、それでも性質的には同じなのだ。

 つまり、公を大事にしている。仕事に向ける感情が、好感情か悪感情かの違いであるが、熱心に仕事に向き合っている。神生じんせいの一生を仕事に費やしているのだ。

 事実仕事意味やりがいを求めた者なのだ。

 けれど、傍観神は違う。彼らは定時で来て定時で帰るのだ。

 帰ったら仕事には手を付けない。仕事とは全くもって関係ない趣味に、もしくは、仕事に近い趣味に熱心に取り込んでいるのだ。

 企業世界仕事意味やりがいを求めなかった者なのだ。それよりも、趣味に熱心なのだ。


 だから、多くの人は、思考し意志を持つ多くの生物は傍観神を知らない。

 種族全体や国全体などといった大きなグループ、つまりに干渉する善神と悪神は知られる機会が多い。

 けれど、最低限にしかに干渉せず、あとは趣味に干渉している。一人の人間、一匹の動物……などといった個にしか分かりやすく干渉していないのだ。

 そうして時間が経つ。人の感覚とは確かに違うが、それでも時間が経つ。

 すると、部署全体でその傾向が現れるようになる。主に係長の影響だ。そりゃあ上司が残業してたら、帰れなくなるのは当たり前だ。

 ということで、善神部署と傍観神部署ができる。

 そしてここが重要なのだが、善神部署は働きまくる。企業世界が求める以上に働くため、上げる利益が大きい。

 すると、その部署は他の部署を飲み込んで拡大していく。特に傍観神の部署を飲み込むのだ。

 そうしてできたのが、創造と振り子の神ズィミギペンディア祈りと豊穣の女神マーテルディア戦いと慈悲の神シュラセトリディア等々といった大柱を中心とした善神勢力である。

 そして、残業万歳善神についていけなくなった者は、人事部に頼み込み傍観神部署に移動したりする。

 ただ、移動したとしても、元々任されていた神性仕事が直ぐに代わるわけでもない。そのため、所属している部署は同じなのに、やっている仕事が違う柱がいるのだ。

 それ長くが続き、ここ最近は、そういうはぐれ者が集まった部署を傍観神という勢力で呼ぶようになった。

 というか、善神の部署が拡大し過ぎて、傍観神が一つの部署に押し込められたのである。


 そしてこれは悪神側にも言える。

 悪神側は自称自営業である。何故、自称かといえば、彼らは企業世界に対抗するために連盟を組んでいるからだ。

 つまり、超小規模企業世界を立ち上げているのだ。

 企業世界に対抗するために作った共同戦線みたいなものであり、基本的に利害で協力体制を作る。

 しかし、悪神はそれぞれ目的が違う。壊そうとしている仕事が違う。

 けれど協力体制を築けてることができているのは、一柱を除き、全員が善神に負けないくらい働き者だからだ。働き者同盟とも言っていい。

 ということで、その働き者ではない一柱は、善神側からは悪神と罵られ、悪神側からは半端者と罵られ、ボッチなのだ。

 

 

 と、これが神々にとっての神々の勢力図。


 なので、人間にとっても勢力図は違ったりするのも確かだ。

 大まかには一緒なだが、時代の潮流によって、善神が悪神とされたり、悪神が善神とされたりという場合が多少ある。


 しかし傍観神は知らない者が多いため、善神にされたり、悪神にされたりすることは殆どない。

 よっぽどの事がない限り。



 Φ



「……はぁ」

「父上。溜息を吐きますと禿げますよ」

「問題ない。それより先にお前の方が禿げるのだからな」


 さほど広くなく執務室。

 そこに、四十代半ばのおっさんと二十代半ばの青年が、どよーんとした雰囲気を纏いながら項垂れていた。

 手元には、読みたくもない報告書。


「……見事に、ですね」

「その見事の元凶はお前だと思うのだが」

「いやですね。私としても色々考えて……」

「……分かっておる」


 おっさんは紅の瞳を息子へと向ける。

 ダークブラウンの優し気な瞳は、後悔と怒りで多少汚れているが、それでも透き通っている。けれど、形相は酷く、ここ数日ろくに寝ていないのが分かる。

 それは、ダークブラウンの短髪にも現れている。第一王子なのに、ボサボサの短髪。整える時間がないのだ。

 それくらい、忙しくて面倒。


「……彼女を過信したのがいけなかったですかね」

「私もお前も、『樹海の魔術師』が何と呼ばれているかを忘れていたのがいけなかったのだ」

「そうだとしても、就任して三日で呼ばれ始めた第三の異名を真剣に考えることは普通ありえませんよ。それにマーティー殿を過信したのも……」

「……どちらにしろ。劇薬を混ぜたのがいけなかったのは確かだな」


 突如、学園都市から報告された惨事。

 一言で語り切れないが、それでも貴族社会を大きく揺るがす、いや他国すら揺るがす惨事。

 

「それで、処分は?」

「それがなんとも。今回、最も処罰されるべきクレア・プロースティブラは、聖国側に保護されましたし」

「……眠りと芸術の女神フェールクラ様の巫女、か」

「ええ。どうにも、力の暴走に飲まれた……という事らしいです」


 クレアは、現状ユーデスク王国とカタフィギア聖国の両国に拘束と保護をされている状況である。

 ユーデスク王国の平民であるが、南大陸巨大経済圏連盟組織による協定と、あとは色々があって、カタフィギア聖国が干渉できる状態になったのだ。


「裏は?」

「こちらも、彼女からの言葉になりますが、デーモンが動いていた、と」

「トレランティア王国を動かしたからというわけではないようだな」

「ええ。アフェーラル商会を呼び寄せて確認したところ、知らぬと。それと、王都第二星屑教会の神殿長が失踪しているのと、クレア・プロースティブラの言葉を合わせれば」

「半年前から、か」


 クレアは、現状悪神側に対しての重要参考人なのだ。

 しかも、異界と侵略の神ゼノィンペリがクレアを深く利用したことが問題だった。

 歴史を紐解けば分かるのだが、悪神は善神にとって有力な巫女や神官を利用する習性がある。善神側から放逐されるような形で。

 そうすることによって、善神側の体勢を批判して、壊すという意図がある。

 つまり、クレアは善神にとって有力な巫女なのだ。


「ただ、デーモンの跡は全て見つかっているのですが」

「全て始末された後だと。しかも、クレア・プロースティブラの言葉を信じれば、アンデッドが、か」

「確かに古い書物では、嘆きと不変の神スリプサイオンは悪神ではなく、傍観神となっていますし、悪神とも対立していると」

「……神魔荒廃大戦の末期に、八賢者と契約を結んだからだろう」

「まぁそれもそうなのですが」


 二人は、既に分かっていることを話し、心を落ち着かせる。

 ついでに、ようやく手を動かし、書類にペンを走らせ始めた。


「『万能の魔女』が調査に動いたのだ。癒しの聖女もおる。デーモンの方は問題ないだろう」

「だといいのですが」


 ダークブラウンの青年は、引っかかるところがあるのか、ため息交じりに呟いた。

 それは父親である中年もどうようだ。紅の瞳を曇らせ、程よく伸ばされたひげを撫でる。


「……はぁ。それよりルークの方だ。グレイフクス家は何と言ってきている」

「それが、なんとも。当主からはただただ遺憾であり、しかしこちら側にも不手際があったため水に流すと」


 ダークブラウンの青年が懐に手を入れ、一通の手紙を取り出した。

 

「ただ、グレイフクス家令嬢、オリアナ・リングからは内密にこんな手紙が」

「……ふむ」


 初めて渡される手紙に、書類に走らせていた羽ペンをインク壺に差し、中年のおっさんは紅の瞳をゆっくりと手紙に走らせる。

 それを尻目に、ダークブラウンの青年はガシガシと頭を掻きながら、書類を丸めた。


「……息子は本当にいい女性を逃したらしいな」

「そこも父上に似ていれば、こんな失敗はしなかったと思うのですが」

「……そこも、とはなんだ」

「いえ。父上は本当に素晴らしい女性と出会われたなと」


 ダークブラウンの青年は、鬱憤はらしのために父親を揶揄る。

 父親はバツが悪そうにそっぽを向いたあと、真剣な表情で手紙を再度見た。


「……お前もこれを読んだのだろう?」

「ええ」

「どうするつもりだ?」

「さぁ? いい知り合いがいますので、そこで養子として取りたいですが、向こうがそれを望んでいない以上。それにグレイフクス家がオスカーの方に付かないと、なんとも」

「……必死だな。王位を譲るのに」

「そりゃあ、面倒ですので。それに、こうやって裏方をやっている方が性に合っていますし」


 そういって青年はペラペラと書類を見せびらかす。

 父親も確かに、と頷く。


「どうもお前は私に似たらしいからな。人前に立つのも人を使うのも面倒なのは確かだ。だが、そうも言っておれん。元老院の方も精霊議会も動き始めている」

「はぁ、担がれる神輿の意見が反映されないとは……私がこれでは、神々はもっと大変でしょう」

「……今の発言は神官に聞かれないようにしろよ」

「分かっております」


 我が弟って本当に好かれてないな、と面倒で厄介な派閥を思いながら青年は、嘯く。星屑教会に怨みはないが、大して恩もないのだ。

 神々に対しても同様だ。王族として敬愛はしているが、それでも割り切れる敬愛だ。やろうと思えば直ぐに捨てられる敬愛だ。

 それはそれ。これはこれという奴である。


「それでルークはどうするのだ? オリアナ嬢の要求を無視するわけにもいかん」

「……モス伯爵と星屑教会が共同運営する教会に入れるというのは?」

「……ふむ。牽制も込められるし、アイツのためになるか。廃嫡になったが、それでも王族の血を持つ者。それに、オリアナ嬢の言葉を借りれば、罪は憎んでも人は憎まず、らしいからな」

祈りと豊穣の女神マーテルディア様の祝福ギフトを受け、戦いと慈悲の神シュラセトリディア様に誓いを立てた者らしい言葉です」


 青年は早速モス伯爵への手紙を書き始めた。


「ブラオンアルバトロス公爵家の令息は?」

「あちらはあちらで始末を付けるらしいが、手は回しておくか。それと、ウィスクム魔術男爵とは今朝話してな」

「何と?」

「もともと、長男というだけで次期当主になるわけでもない、だそうだ。それに魔術師の、魔の字も知らん小僧に『花の魔導士』の名はあげられぬそうだ」

「……そういえば、『万能の魔女』からの報告書にも同じような事が書いてありました。……上級魔術を使いこなすのに魔術師ではないとは、魔術師が集まりすぎるとこのような事になるのですか」


 あ、間違えた、と項垂れながら手紙を書き直していた青年が天を仰ぐ。

 父親はそれを見てまだまだだなと思ったら、書類を書き損じた。


「……魔術師だろうが芸術家だろうが貴族だろうが、それは必然だろう。どこにも外側からでは見えないルール儀式があるのは当たり前だ」

「それもそうですね。……それより問題は帝国からの留学生です」

「……ブルーコルムバ大公爵がルークの支持を取りやめた以上、自国に帰ってもらうのが一番よいのだが」

「……父上、あそこは何がしたかったのでしょうか?」

「さぁ、わからん。どっちにしろう、大公爵の名もお飾りになったのは確かだな。とにかくあれでは、良くても質素に暮らすだけだろう。今回は流石に王家側でも支援できぬしな」


 ブルーコルムバ公爵は今後、貴族社会で真面に相手にされなくなるのは確実だ。

 青年としては、それ自体はどうでもいいのだが、公爵に与する子の者などが巻き添えを食らうのはなんとも遺憾だ。

 大公爵が持つ派閥であるから、それなりに政に関わっている者が多い。それの大多数が一気に使い物にならないとなると、面倒この上ない。

 混乱は免れないだろう


「……自由冒険連合に頼るしかないですか」

「無理だな。ブルーコルムバ派閥は特に財政の方に関わっておったしな。まぁ、私らが混乱を避ける名目で全く無関係だった者だけを取りまとめてもいいのだが」

「それはグレイフクス家にしてもらいたいのが実情ですか」

「ああ。精霊議会は良いとして、元老院にはな」

「確かに。面倒でしかありませんか」


 苦々し気に青年は呟く。そして盛大な溜息が漏れた。


「……まぁ監督責任を問うて『万能の魔女』をこき使っているのだ。留学生もあ奴に任せればいい」

「……いいアイデアですね、父上。早速命令を下しておきましょう」

「お菓子を添えれば、喜んで引き受けて貰えるから留意しておくように。どうにもアレは阿呆らしいからな」

「阿呆というか、何があっても自分の身が守れるからでしょう。強者故の対応だとマーティー殿が言っておりました」


 確かに、と父親は頷く。

 何があっても挽回できる力があるからこそ、熱心ではないのだろう。


「……そういえば雷鳴の巨人はどんな様子だ?」

「昨日の報告通り、『空欄の魔術師』による“雷光の夫婦剣”の変質以降、こちらの会話に答えるようになりました。それに鎖が消えたのも」

「ただ、マーティー殿については仔細を得ぬか」

「どうにも、マーティー殿から口止めをかせられてるらしく。今は、伝えられる内容を片っ端から精査しています」


 ユーデスク王国の切り札ともいうべき“雷光の夫婦剣”が使い物にならなくなってしまったのは遺憾であるが、それでも神魔荒廃大戦時に、単身で悪神の化身ヴォーロスを倒した巨人が動けるようになったのだ。

 今の今までは、念のために『黒雷の魔導士』が代々契約してきたが、それでも使役することはできなかった。

 雷の鎖によって動けなくなっていたからだ。

 けれど、“雷光の夫婦剣”が眠ったのと同時にその鎖が消えたのだ。しかも、暴れることもなくこちらの意思疎通に答えているところをみれば、問題はないらしい。

 

「『空欄の魔術師』はそれについて何か言ってこないのか?」

「はい。あれから一切動きはないようです。学園生活を満喫していると」

「……拘束したいのはやまやまだが」

「手札が分からぬ以上。“雷光の夫婦剣”が使い物にならなくなった実力を考えると、こちらにある程度協力的な今はまだいい方でしょう」

「竜の尻を蹴り飛ばさなければならない日が来ないことを祈るか」


 父親である金髪のおっさんが今日何度目かの溜息を吐く。

 と、その時、執務室を叩く音が聞こえた。


「入れ」


 そうして、ユーデスク王国国王、ナーヴィス・スコラ・ユーデスクと第一王子、レジー・オルド・ユーデスクはさらに気苦労を重ねるのだった。

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