第7話 もう一人

 「え?」

 「追われてるんです!」

 「追われてる?」


 彼女は今にも泣き出しそうな顔をしている。


 「ちょっとここで待ってて」


 状況がつかめない俺は一旦外に出て扉を閉める。

 すると次の瞬間、隣の階段からたくさんの男子が上がってきた。


 「あれ、どこに行った?!」

 「くそ、逃げられた!」

 「おい!3階も探せー!」


 よく見るとどの男子も各部活動のキャプテンばかりだ。

 俺はその中に混じっていた剣道部のキャプテンで親友の明正を見つけた。


 「お前ら何やってんだよ」

 「煉牙!お前金髪のかわいい1年見なかったか?」

 「金髪のかわいい1年って、揚羽のことじゃないのか?」

 「それが1組にもいたんだよ。煉牙の妹並みにかわいい金髪の一年が」

 「そうなのか?」


 たぶん今部室に入ってきた女子のことだろう。

 揚羽のいた4組しか覗いてないから知らなかったけど、あの子も1年生だったのか。


 「じゃあその子が噂の美少女なのか?」

 「いや、煉牙の妹を見て美少女って思ったやつもいれば、その1組の女の子を見て美少女って思ったやつもいるから……」

 「どっちも噂の美少女ってことか」

 「そういうこと。で、その美少女たちを自分の部活の部員にすべく、みんなで探していたとこなんだ」


 なるほど。だから俺の、いや、オカルト部の部室に逃げ込んできたのか。


 「その子なら3階に行ったぜ」

 「本当か?!」

 「ああ、でもあんまり怖がらせちゃダメだぞ?」

 「おう!」


 親友に嘘をつくのは気が引けるが今は仕方ない。

 よだれを拭きながら階段を駆け上がって行く明正の背中を見ながら俺は部室に戻った。

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