第050話 お仕置きと、大宣言!後編!!
集めたパラスラフレシアの花弁。
その数、1000体分!!
花弁の津波でカウンターどころかおやっさんの足の踏み場すら埋め尽くし、ぐっちゃぐちゃにしたところで、俺は店の客たちを見回す。
「ば、千体……だって!?」
「マジかよ! 信じられねぇ!」
「しかもあの花弁、どれも質がいい状態で処理してあるぞ!!」
「いったいいくらになっちまうんだ!?」
さっきまで俺たちを歓迎してくれてた奴らも含め、全員が驚き一色に染まっていた。
ああ、俺は。その顔が見たかった!
「《イクイップ》」
俺はここぞとばかりに赤が主体の見た目が派手な装備に衣装チェンジし、声を張る。
「聞け! これこそが冒険って奴だ! 俺はそれを成し遂げた、真の冒険者だ!!」
「なっ! 何を言ってやがる!」
「いや、これはマジでやべぇってヨシ君!」
「あいつ、マジモンだ!」
目に見える成果と共に叩きつけた言葉は、想定通りに力を発揮している。
今、この場を支配しているのは、俺だ。
(だからこそ、この言葉はちゃんと、みんなに伝わる!!)
確信をもって、俺は大きく息を吸い、再び声を張り上げた。
「俺は白布! 将来ビッグになる男だ! 俺が求めているのはレアアイテム! それも
「!?」
「ご、GRなんて本当にあるわけが――」
そんな言葉じゃ止まらん!
「俺の歩みにいっちょ噛みしたい奴は、レアアイテムの情報を持ってこい! あの白布様の偉業に自分は関わったんだって、ガキに自慢する栄誉をくれてやる! 俺より先にレアアイテムを手に入れて、対抗するなら望むところだ! 必ずお前を追い詰めて、そのレアアイテムを奪ってやる!! 覚悟しろ!」
「なっ、なにぃ!?」
「こいつ、俺たちに喧嘩売って――ひっ!?」
相手が動くより先に、その足元に投げナイフを突き立てる。
今適用されたのは、ナイフ装備適性か、はたまた投擲武器装備適性か。
どっちにしても、
「俺がいない時はここのおやっさんに告げ口しとけ! 使えるネタなら後でおやっさんを通して金を出す! 俺に支払い能力がないなんて、今この時に言える奴はいないよな?」
「………」
そう、誰も言えるはずがない。
このうず高く積み上げられた、高級食材の山を見て、な?
「……商会連に、目を付けられるぞ?」
「そこはおやっさん、何とかしてくれ。報酬はこの売り上げの5%くらいで」
「……フッ。ドバンがお前を手放したがらないわけだ」
「いや、あの爺さんそろそろネタ切れくさいからこっち来たんだがな?」
とか言いつつ、いい情報仕入れてくれそうだから今後も通うけど。
「ってことで、おやっさんとは話がついたから、今言ったことは全部実行される」
もはや唖然として黙り込んでしまった他の冒険者たちを一瞥し、俺は椅子上のナナを見上げる。
彼女は待ってましたと頷くと、今度は軽やかに椅子の上から飛び上がり――。
「うおっ!?」
「ひぃっ!」
「な、なんだ!!」
さっきから一番騒いでいる冒険者の席の前に着地した。
「さぁみなさま、祝福の声をお上げください。今からここは、わたくしの主様……白布様の輝かしい道行の始まりを祝う場となります」
「は?」
ナナの言葉を訝しむ連中の前に、何よりもわかりやすい動機をプレゼントする。
「今日、この時から店の務め終わりに至るまで……すべての飲み食い宿泊代は、わたくしの主様がお支払いくださります」
ナナが懐から取り出したのはお財布、お金専用収納アイテム『ガマグチ君』。
逆さにされたガマグチ財布の開いた口からは、ザザーと音出すゴル金貨の滝。
「は?」
「ひ?」
「ふ?」
「へ?」
「ほぉ~~~~~~!?!?」
ついに登場したキラキラ現ナマを前に、冒険者たちの目の色が今度こそ変わった。
俺はその隙に、収納アイテムでパラスラフレシアの花弁を回収するおやっさんに声をかける。
「ってことで、おやっさん。今日の店の支払いは全部俺持ちで」
「好きにするといい。今日の主役はもう、お前なんだからな」
すっかり呆れ果てた様子のナイスバリトンを心地よく聞いてから、俺は頭の上で拍手を打つ。
「!?」
「さぁ、ってことで好きに騒いで、好きに飲み食いして、好きに泊まっていけ! その代わり、俺の言葉を忘れるな! 俺は白布! 冒険者! 求める物は……」
「「レアアイテム!!!」」
コール&レスポンスもパーフェクト。
これにてミッションコンプリート、だな!
……こうして白布、こと俺、センチョウ・クズリュウは世界に覇を唱えた。
地方都市の冒険者の宿っていう、世界からしてみれば小さな小さなその場所で。
「主様!」
「お疲れ様、ナナ。ありがとうな」
「わぅぁぅ、いきなりの耳なでなで。心地よく……すべては主様のお望みのままに、でございます」
小さな小さな仲間と共に。
「現金報酬200万gだと? やれやれ……とんでもない奴が出てきたな」
とりあえず当面の金をゲットしつつ。
「……やるぞ、アイテムコンプリート!!」
俺の心は意気軒昂!
レアアイテムコンプリートへの道を、着実に歩み始めるのだった。
※ ※ ※
数日後。
これは俺がいない時に起こった、冒険者の宿での会話。
「ここ、妙に活気があるのね?」
「なんだ、知らないのか眼鏡の嬢ちゃん。ここはな、白布様のお膝元なんだぜ」
「白布?」
「そうさ! レアアイテムハンターの白布様さ!」
「すっかり焼け焦げてた討伐依頼を華麗に解決、そこで200万gの大金を得た期待のルーキー!」
「一人の可愛い女の従者を連れて、望む狙いが――」
「「レアアイテム!!」」
「!?」
「おっと悪いな。最近このノリが定着しちまってよ。俺たちも冒険するようになってから羽振りもよくなったんで、気がでっかくなってんだ」
「……問題ないわ。それで、その白布って人はどちらに?」
「さぁな、今日もレアアイテムを求めて闇市歩いてるか、金払いのいいところの依頼受けてハッチャケてるか。あの人の動きはさっぱり読めねぇんだ」
「あ、でも確か……マスターの知り合いのとうひ……ごほん。商人のところには、よく足を運んでるって話だぜ」
「バランだったかドバンだったかいう名前の爺さんな」
「なんかレアアイテムの情報があるなら、おやっさんに話すといい。白布に話を通して、真偽を確かめたところで相応の金をくれるからな」
「そうなの?」
「おうよ、おかげで俺たちもレアアイテムに目を光らせるようになっちまってな。だからさっきみたいなノリがこう、つい……」
「なるほど、レアアイテム……そう、だったら」
「なんだい、美人な只人(ヒューマ)のお嬢ちゃん。情報に当てでもあんのかい?」
「……ええ。まぁね。だから私」
「?」
「その人に……白布に、会いに行くわ!」
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