第2章 立志編
第027話 ソロ旅してる奴特有の独り言!
青い空、白い雲。
俺ことセンチョウが何かを始めるときは、大体がこんな空模様の時だ。
今日の俺はとある目的のために町を離れて街道を行き、さらにそこから外れて森へと向かっている。
徒歩での移動のために時間がかかるその道中。まさに今、何とはなしに自分のことを思い返して、俺は旅の暇を潰していた。
動画配信者だった九頭龍千兆は超長時間ゲーム生配信の果てに死に、別世界でセンチョウ・クズリュウとして第二の生を始めた。
別世界、モノワルドは装備適性とアイテムのレアリティが大きく人々に影響を与える世界。
強い適性を持つ者が強いアイテムを
俺は神様であるゴルドバ爺に、今世の目標であるレアアイテムコンプリートを目指せるよう『財宝図鑑』というアイテムと、他者の装備を強制的に解除して奪うことができるチート
神様の粋な計らいで、俺の装備適性はすべての物に対してC……上から4番目、《イクイップ》したものは何でも上手に扱える程度の能力がある。
さらにはゴルドバ爺からパク……チュートリアルでプレゼントしてもらったGR(ゴッドレア)装備『ゴルドバの神帯』の力で、装備適性をすべて2段階上げたAにすることだってできる。
装備適性Aともなれば、熟練の技を超えた天才の領域までアイテムを扱えるようになり、そこらのフォーク1本手にするだけで、剛腕の大剣使いの一撃を受け流したりもできちまう。
あらゆるアイテムでそんな変態アクションできる俺は、つまりこの世界における強キャラであることに何の疑いもないだろう。
レアアイテムが揃えば揃うほどに強くなる。それがこの俺、センチョウなのだ。
そんな俺も前世の記憶を5才で取り戻してから10年が経ち、今は成人である15歳。
幼少期を過ごした孤児院から出発し、ついにここから本格的なアイテムコンプの道を歩き出す時期となった。
予定では一人、旅の仲間がいたはずだったが、彼女とは都合があって道を違えてしまった。
別れの前の情熱的な時間は、今も俺の心に深く刻み込まれている。
具体的には独り立ちして1か月、ちょっといい雰囲気になった女の子からのお誘いを回避してしまう程度に。
お、お、お。ちょっと待ってくれ。ステイ、ステイ。帰らないでください!
これには事情があるんだ。
冷静に考えてみてくれ。
超絶可愛い上にめちゃくちゃその手の技術に長けたハーフサキュバスの女の子と、甘く濃密な時間を丸々一週間体験したんだぜ?
しかも10年ひとつ屋根の下にいてずぅーっと愛情深く接してきた子と、だ。
触れれば柔らかに俺の手を受け止めてくれるどれだけ触っても飽きが来ない肌。
つつけば愛らしい反応が返ってくる頭翼や腰翼。
甘ったるい香水と、彼女本人が放つ色香の混ざった脳を蕩かす匂い。
俺が求めれば求めるだけ応えてくれる、呼吸ぴったりの口づけ。
そのうえ口からはひっきりなしに俺を求める声が紡がれるときたもんだ。
あの時はさらに薬を盛られてたのもあって思考能力なんてものはなく。
何ひとつとしてブレーキが利かない状態で求め合った――。
……
無理じゃん!
普通に考えて無理じゃん! その子と比べちゃうじゃん!!
俺は最高の女の子とマジで最高の経験をしてしまったんだよ!
だからこう、するならするでもう何かすっごく尖った何かがないと、手が伸びないんだよ!
多分ここまで踏まえて彼女の、ミリエラの策だったんだろうってのは分かる。
それくらい、彼女の本気を叩きつけられた経験が、俺の初体験が強烈だったんだ。
とまぁ、そんなわけで。
俺の雄としての心向きは、すっかりとミリエラ級を求めるグルメ嗜好になってしまったのである。
ちなみになんでそんな素敵な彼女と道を違えたかって?
俺が聞きたいよ!! なんか修行の旅に出ちゃったんだよ!!
ミリエラー! カムバァーーーーーーック!!!
っと、いかんいかん。
もう森に入ったんだから、変に大声出したら気取られちまうな。
最低でも1チームくらいは狩りたいところだから、ここらで気合を入れないとだ。
「神帯巻き巻きの『財宝図鑑』ヨシ! 森歩き用のブーツを《イクイップ》、暗殺と相性がいい短剣を《イクイップ》、隠密適性の高い
そろそろこれから始めることについて説明しよう。
成人して旅に出た俺が最初に求めたのは、ずばり金である。
金があれば
なるべく早く資金力が欲しいから、決まった場所でチマチマ働くよりは、どこかで一攫千金を狙おうと決めた。
そんな俺が目を付けたのが、そう――。
「おう、さっき襲った馬車の荷はちゃんと運び終わったか?」
「へい親分。しめて3万
「へへっ、大当たりだったなぁ。お前ら! さっそく勝利の宴だぁ!」
「「ヒャッハー!!」」
盗賊狩りである。
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