第025話 7年の安寧、幼少期の終わり
初めての町、初めてのレアアイテム、初めてのゴロツキ、初めての貴族、初めての死線。
初めて尽くしのパルパラでの一夜が過ぎ、俺の生活は色々と変化した。
「セン君。セン君、センくーん」
「うむうむ」
都市長邸での一件以来、べったりする時のパワーが上がったミリエラ。
だがそんな彼女のスキンシップに対しても、今の俺は余裕を持って対応できるようになっていた。
「むー、セン君が前みたいにドキマギしてくれない……」
「フッ、俺も成長したってことだな」
「……ううーーーー!! やっぱりあの時、大人の階段上ったんだ」
実際は都市長から勇者した『魅了耐性向上の指輪』(レアリティ:HR)のおかげだが、勘違いしたミリエラが勝手に対抗意識を燃やして個人訓練をし始めてくれるので、結果として前ほど俺にべったりしなくなって大助かりである。
「セン様ー!」
「こんにちは、カレーン」
「お会いできて嬉しいです。ミリエラさんも!」
「うん。今日も一緒に遊ぼうね」
「はいっ!」
「……お、その髪飾り新しくしたのか? 似合ってるぞ。素敵だ」
「まぁ! ぽぽぽっ」
(おそらくR……くらいか? あとで触らせてもらおう)
パルパラにも積極的に出かけては、都市長の娘であるカレーンをはじめ鑑定屋のルーナルーナの店や色々な場所を巡り、モノワルドの人々の生活と関わりながら常識を学ぶ。
この時期は特に、見える世界が広がった気がして、とても楽しい時間だった。
「千兆様。アイテムを手に入れるたびにわざわざこちらに来られるの面倒ではございませんか?」
「面倒だが、現状鑑定された情報を閲覧するにはそれしか方法がないだろ?」
アデライードが守る宝物庫にも何度も顔を出し、幼いながらにやりくりして手に入れたアイテムの鑑定をしてもらう。
彼女にはアイテムの詳細を知る力があるが、それを活用するにはこうして宝物庫に入る必要があった。
心だけがここに飛んで現世とは時を同じくしないとはいえ、さすがに手間である。
「俺自身で鑑定できるのが一番手っ取り早いが、そのためにはやっぱり『鑑定眼鏡』が必要だよなぁ」
「SRのアイテムですので、モノワルドを這いずり回ればそれなりに発見できるとは思いますでございますよ」
「んじゃあそれを、大人になってから最初に達成する目標にするか。今は、もうちょっとこの面倒臭さを楽しむとしよう」
そんな風に、大人になってからの目標を増やしていたら。
「でしたら飽きが来ないよう、千兆様の記憶からお好きなBGMをお流ししましょう」
「え!? そんなことできるの? マジで!?」
「マジのマジでございます」
「じゃ、じゃあ! まずは――!!」
思わぬところで前世の娯楽を楽しめるようになったりもして、俺の日々はますます彩りを増し。
「セン君っ」
「セン様!」
「千兆様」
「こらー! センー!!」
「センや」
「おーい、セーン!」
「セン」
「センチョウ」
「セン」
「セン」
………
……
…
「なるほど、センチョウというのね。貴女が遭遇したという、子供の名前は」
「ハッ」
「ワタクシと同じ年で、そんな異質な現象を起こすなんて、すごい人材もいたものですわね。ぜひとも、ワタクシの手の中に収めたいものですわ」
「おそれながら、その者が言うには他にも高い能力を持った存在がいると……」
「そうなの? うふふ、それって最高だわ!」
「姫様?」
「きっとそれは、世界が変革を望んでいるのよ。ならばそれをなすのが、ワタクシの使命ですわ」
「ハッ、姫様ならば必ず。我が娘もそのお力になれれば……!」
「えぇ、えぇ、存分に働いてもらうわ。ワタクシの……世界制覇のために!!」
…
……
………
そして、七年の月日はあっという間に過ぎていった。
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