第012話 鑑定屋ルーナルーナ!
レアアイテムコレクター、センチョウ。
第二の人生を謳歌する舞台、モノワルドにて初めてのレアアイテム遭遇。
雄叫びを上げた俺を見つめる、ミリエラとドワーフの鑑定屋ルーナルーナ。
「……《ストリ》――んむぐ!」
ルーナルーナに向かって《ストリップ》を使おうとしたのを、口を塞いで中断する。
ギリギリのところで、俺の理性が衝動を押しとどめた。
(……っぶねぇ! 犯罪者になるところだった!)
どういう手段であれ、他人の所有物を強引に奪うことは犯罪としてカウントされる。
やるにしたって目立たず、バレずに実行するべきことだと、自分に言い聞かせる。
そう、バレなきゃ犯罪じゃないんだよ。バレなきゃ……な!
「……ほんとにどったの?」
「いえ、つい。ルーナルーナさんがあんまりにも可愛くって叫び声がでました」
「んまっ! お上手!」
心配そうに声をかけてくれたルーナルーナに軽口を返せば、ポッと彼女の頬が朱に染まる。
速攻でミリエラが「わたしはー?」って聞いてきたので、そっちも可愛い可愛いと撫でておいた。
「俺、鑑定屋に来るの初めてなんだ。よかったらここで何ができるのか、教えてくれ」
「ほぁー、私を褒めたと思ったらいきなりのため口。心の距離の詰め方がエグい。でもお姉さんそういうの好きだからOKしちゃうー」
どこかふわっとしたノリで受け答えするルーナルーナだが、鑑定屋については快く教えてくれた。
「
「もちろん」
モノワルドにおける人の能力を大きく左右する2つのシステム。
G、F、E、D、C、B、Aまで遡るほどに装備の力をより強く引き出し、その頂点をSとする装備適性。
これらの組み合わせにより、この世界の人々は自分の役割を定めている。
「鑑定屋のお仕事は大まかにふたつ。レアリティ鑑定と、装備適性鑑定。どっちもその名の通り、前者は道具のレアリティを鑑定して、後者は人物の装備適性を鑑定します」
「えっ、人の鑑定もできるのか?」
「できますとも。ルーナルーナさんが持つ眼鏡適性Bの実力と、この『鑑定眼鏡』があればね」
ドヤ顔で眼鏡のつるを持ったルーナルーナが、レンズをキランッと光らせる。
高い装備適性とレアアイテムの組み合わせが織りなす奇跡こそ、この世界の専門職の真骨頂。
俺は素直に感心し、目を輝かせた。
「ふおおおお……すげぇ!」
「そうでしょうそうでしょう。ルーナルーナさんキミみたいなリアクションいい子好きだよー」
俺の反応に気を良くして、ルーナルーナがどんどん調子を上げていく。
カウンター越しにない胸を張って、えっへんと鼻息フンスフンスする姿が愛らしい。
「ふっふっふ。今ならキミたちの装備適性、ルーナルーナさんが無料で見てあげよう~」
「え、いいのか!?」
「いいよぉ。お姉さんの機嫌は今、いい感じにいい感じだからねぇ」
マジかよやったぜ!
正直ここもウィンドウショッピングで終わるだろと思ってたからいいチャンスだ!
ぶっちゃけ俺の手持ち4
「ミリエラ、やったな!」
俺は喜色満面にミリエラを見て。
「ちゅー」
「ふぐぅっ!?」
何の脈絡もなくいきなり唇を奪われた。
しかも頭翼、腰翼全開の、サキュバススペックフルバーストの本気のキスだった。
いや、なんでそれしたかは予想できるよ?
ちょっとルーナルーナの方ばっかり見て楽しそうにしてたからね!?
だからってお前、お前ぇー!!
「ちゅー……ん。うん、よかったね、セン君!」
「ぷぁっ!? は、はぁ!?」
「ほぉー、彼女さんはサキュバスちゃんだったかー。眼福眼福~」
まさか初対面の人の前でまでこんな真似をするなんて、あんまりにも予想外すぎて。
なんかもういきなりすぎて俺の脳みそは爆発した。
「ば、ちょ、ま……何すんだミリエラ!」
「えっへっへ~」
「かぁー! そうやって可愛い顔すれば何とかなると思ってるなお前ぇー!!」
「ほらほらセン君。鑑定して貰えるんだからして貰お?」
「かぁー!」
「ヒューヒュー、お姉さんそういうの大丈夫だから。イケるから。ねっ」
「かぁー!」
頭ボカンとなってる俺じゃミリエラを問い詰められるわけもなく。
しかもルーナルーナまでなんかそれを平然とスルーしているのもあって話が進んでしまう。
なに、この世界のサキュバスって治外法権的にセクシャル許されてるの?
もはやあれか? 見染められた時点で負け確定の奴なのか!?
バッドエンド回避不可な奴?
うおおおお、俺は抗う! 諦めんぞぉーーー!!
「ほいじゃ、装備適性鑑定するよー」
「はい」
脳内スイッチ切り替えON!
俺は勧められるまま椅子に腰かけ、背筋をピンと伸ばした。
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