第204話
「新市長が決まりました! 灰宮新市長が誕生しました。おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
「新市長は議員だった、ひいおじい様の再来とも言われていますよね」
「いや、顔が似ているだけですよ。しかし、市長になることは、曾祖父の代からの念願だったので、嬉しいです」
曾祖父と似ている、という言葉を受けて、曾祖父だという人物の写真が画面の隣に映し出された。
「へえ、気が利くねえ」とテレビに向かって呟いた。
「わあ! 本当にそっくりですね!」
リポーターのはしゃいだ声も違和感を感じないほど、本当によく似てる。血は争えないもんだ。
黄ばんだ写真の中には、曾祖父だという男の全身が映っている。四十代位の写真だろうが、年齢のわりに背が高い。そして首が前に出ている。飲み口が曲がるストローのように。
「何が曾祖父の代からの念願だ。いけすかない奴が市長になったもんだよ。悪いことはぜーんぶ、こっちに押し付けて、市長様ですか」
ふん、っと鼻から息を吐いて、画面を睨む。
最近、老眼が進んで本当に見えにくい。おや、白っぽく画面が濁って見えるね。もしかして、白内障かねえ。
目をゴシゴシと擦る。目から手を離すと、あの懐かしい女の子が見えた。灰宮の手をしっかりと握っている。
「ひくっ」
喉の奥がひきつった音を立てた。女の子のとなりには、南由さん。その隣には髪の長い若い女性。
そしてそれだけじゃない。記念撮影をする時みたいに、数えきれない亡霊達が灰宮を取り囲んでいるから、白く濁ったように見えたんだ。よく見ると、どことなく見覚えがあるような亡霊たちがちらほら混じっている。
当たり前か、あの人たちは、うちで契約した人達なんだから……。
生きている人間たちが、ばんざい、ばんざい、と両手を上げて大声をあげ、大口を開けて笑っている。そしてパーティーの準備をする雑音が入る。
何かを搬入してきたのか作業服を来た人物が画面の端に映り込んでいる。当選祝いのために、部屋を飾り付けているのだろうか。窓辺に何かをぶら下げ、作業員は足早に部屋を出て行った。
「帽子に顔が隠れているけれど、あの二人にも見覚えがあるような気がするね」
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