第193話 3
永里が退院する日の朝は、よく晴れていた。病院の入り口で、空を見上げる。空の青はまだ薄いが、雲ひとつない。うららかな日になるだろう。
ジェットコースターの安全バーが外れるという前代未聞の事故は、あの日の夕方のニュースで報じられ、永里の両親は入院当日の夜には駆けつけていたと聞いた。
事故は外部機関の調査により、ジェットコースターの整備不良による過失だと結論づけられた。そのため、永里は同情されこそすれ、乗り方が悪かったなどと、責められるようなことは一切なかった。当然ながら、入院の費用も遊園地側が負担し、さらに損害賠償も検討されているという。
永里の両親に、「一緒にジェットコースターに乗車していたのに、娘さんに怪我を負わせてしまって申し訳ない」と頭を下げると、永里の母親に、「いえ、いえ、絵里の命を救ってくれたのは蓑笠さんです」と、何度もお礼を言われ、胸が痛んだ。
幸いなことは、永里の負った傷が、顔の傷も含めて、思いのほか綺麗に治りそうなことだった。永里が運ばれた病院には、腕のいい形成外科医が常駐しており腕の見せ所とばかりに、話題の人となっている永里の治療にあたってくれたのだ。
三浦の失踪については、入院中の永里を動揺させてはいけないと、伏せられていた。永里は三浦から連絡が途絶えていることは気になってはいるようだが、友人からの見舞いがひっきりなしにあるため、忙しさに紛れてしまっているようだった。俺ももちろん、永里には何も言っていない。
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