第189話
「南由……」
たまと南由は、窓辺のガラス細工の中に吸い込まれるように消えた。ガラス細工はたまと南由を飲み込み、扉を閉ざした。南由を手に入れた、たまの歓喜の声だけを残し、ただの美しいサンキャッチャーにもどった。
サンキャッチャー。バランスをとって、ゆらゆらとゆれている。
何かが頭にひっかかった。サンキャッチャーというのは、新しい言葉だが、子供の頃、これと似たようなものが、違う名前であったはずだ。
そうだ、子供部屋の天井からぶらさがっていた飾り。大好きだったじゃないか。飛行機がいくつもついて、追いかけるようにくるくる回っていた。
えりぼむは、MOBILE。だけど、モバイルじゃない。モビールだったんだ……。
全てが終わってから気が付くなんて、自分のうかつさに胸がひりついた。つまり九枝不動産の社長が壊せと言っていたのは、窓辺のガラス細工のことだったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます