第189話

 「南由……」


 たまと南由は、窓辺のガラス細工の中に吸い込まれるように消えた。ガラス細工はたまと南由を飲み込み、扉を閉ざした。南由を手に入れた、たまの歓喜の声だけを残し、ただの美しいサンキャッチャーにもどった。


 サンキャッチャー。バランスをとって、ゆらゆらとゆれている。


 何かが頭にひっかかった。サンキャッチャーというのは、新しい言葉だが、子供の頃、これと似たようなものが、違う名前であったはずだ。


 そうだ、子供部屋の天井からぶらさがっていた飾り。大好きだったじゃないか。飛行機がいくつもついて、追いかけるようにくるくる回っていた。

 えりぼむは、MOBILE。だけど、モバイルじゃない。モビールだったんだ……。


 全てが終わってから気が付くなんて、自分のうかつさに胸がひりついた。つまり九枝不動産の社長が壊せと言っていたのは、窓辺のガラス細工のことだったのだ。

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