第180話
視界の端が赤く染まった。どこかの血管が切れて、血が目に滲み出たのだろうか?
「南、由、スマ……ホを!」
必死で声を絞り出した。俺がこの世に引き止めたんだから、俺があっちに送ってやる。
「嫌……。だって壊すつもりなんでしょ? 紘くんがくれた手紙、なくなっちゃう……」
南由が携帯電話を胸に抱きしめて、首をイヤイヤと振る。
「手紙なんか、消えても大丈夫だ。一緒に逝ってやるから。だから、南由……」
「ねえ、紘くん。私……、本当に死んじゃったのかなあ?」
涙が次から次へと南由の頬を伝う。たまがなゆに抱きついた。
「なゆは死んでる。でも悲しくないよ。それってあたしとおんなじだもん。だからあたしと一緒にいようよ。家族になるの。家族は一緒にいなきゃ」
「家族なんかじゃないだろ! 南由、たまの言うことなんかに耳を傾けるな!」
南由はたまと俺の間に視線をさ迷わせた。
「私、どうしたらいいの?」
「こーたはウソつきだよ。きっとまた、なゆを置いて、どこかに行っちゃうに決まってる」
幼い少女の顔をしているのに、たまは南由を的確に揺さぶってくる。
「あたしといれば、寂しくないよ。なゆを捨てたりしない。他の子のところに行ったりしない」
うつむいた南由の瞳が揺れている。迷っているのだ。
「南由! 聞くな!」
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