第174話

 「ごめん。だけど、あいつらから解放してやる。だから」


 携帯電話を壊そうと、赤い柄を握りしめドライバーを振り上げる。


 「お願い、やめて! 紘くんからもらったメッセージも消えちゃう!」


 南由が悲鳴をあげる。


 「邪魔するな、南由!」

 「嫌、やめて、紘くん!」

 「このスマホさえなければ南由だって……!」

 「やめてぇ……」


 南由が「聞きたくない」と両手で耳をふさぐ。うつむいて頭を横にイヤイヤと振る。かわいそうだ、と思いながら、言葉を止められない。

 

 「そうすれば南由だって、成仏、できるだろ?」


 南由はコキッとうつむいていた顔をあげ、不思議そうに俺をみる。


 「………………なに、言っているの、紘くん。私、死んだりしてないよ? 成仏だなんて、まるで私が死んでいる、みたいな、言い方して……。 紘くん……」


 南由が俺を見つめて立ちすくむ。ゆっくりと首を右に傾けると、さらりと髪が流れた。


 「冗談だよね? 紘くん」


 南由がすがるように見つめてくる。黙って南由の瞳を見つめ返すと、答えを探す様に必死な目で、俺の目を覗き込んでくる。

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