第169話

 すぐにでもスマートフォンを粉々に砕いて、南由をたまとおかーさんから解放してやりたかった。しかしコンビニエンスストアの駐車場で、スマートフォンを叩き壊すのは目立ちすぎるし、見咎められて、破壊しきれずに車で移動する羽目になるのは避けたい。


 誰にも見られずに作業できる場所と考えたが、海岸も河原も、誰も来ないという保証はない。一人暮らしなら自分の家でもいいのに、と思う。しかし、俺の家には両親と妹が同居している。家族に危険が及ぶようなことはしたくない。


 結局、思いつく場所は一カ所しかなかった。南由の家だ。元凶の場所なのだから、ふさわしいとも言えるが、たまとおかーさんのホームに飛び込むようなものだ。


 「上等だ……」と呟く。九枝不動産では「事故物件ではない」と言っていた。その言葉を信じるならば、場所が問題なのではない。

 「えりぼむがお前らの家なら、二度と出てこられないように粉々にしてやる」

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