第167話
店長はちょっと口をつぐんで、ちらりと天井に目をやった。つられて見上げると、万引き防止の大きな鏡があった。店内に他の客がいないことを確認して続ける。
「だからあの人がくると、いつも気にしていたんだけど……。ある時ね、あの鏡に何か探している様子が映っていたんだよね。だから側に近寄ったのよ。コンビニって、お客様は声をかけられるのはあまり好きじゃないから、何か探しているのかなっていうときは、お客様が尋ねやすいように側に行くようにしているんだよね。
そうしたら、いつものように、独り言をブツブツ言っているわけ。ついつい、気になって聞き耳を立てちゃったのよ。そしたらね、誰かと電話で話しているみたいに、会話口調でね。変な話でしょ?」
少し自信がなさそうな店長に頷いてみせ、信じていますよ、と目で伝える。
潮田の会話の相手はたぶん、たまかおかーさんだろう。潮田が小さな女の子の幽霊と一緒にいるところを店長が見たと言っていたから、たまかもしれない。
「『家族だから、しいんも一緒が良いと言ったって……。わかった、わかったよ。言うとおりにすればいいんだろ』って言っていたんだ。だけどその時は、しいん、というのがピンと来なくて。日常的な言葉じゃないだろ。だからどこかでジュースか何かの試飲でもしているのかと思っちゃってさ。あとから考えたら、死の原因の死因だったんだよね」
「えっ? それはどういうことですか?」
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