第154話

 南由の手をキュッと握る。こんなことでいいのなら、いくらでもするのに。

 たまが繋いだ手をぶんぶんとゆさぶる。たまは五、六歳くらいに見える。ジェットコースターは十歳、または百三十センチから乗れると書いてあるから、生きていたら、ジェットコースターには乗れない。


 もっと言えば、九枝不動産の女社長の話を信じるなら、「たま」はまだ生まれてもいなかったはずだ。たまの精神はきっと、生まれる前の、生への期待、希望しかないんだ。生きることの大変さも辛さも知らない、純粋なあこがれ……。


 可哀そうだと同情する気持ちもある。しかし無邪気な欲望からとはいえ、たまとおかーさんは、潮田を憑り殺したのだし永里を傷つけたのだ。そして南由を欲しがっている。


 そうだ、たまが幼い子供なのだとしたら、ジェットコースターで目を回したりしないのだろうか。もしも……もしもたまが目を回したら、逃げ出せるだろうか。解放されるだろうか。

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