第151話
※※※※※
「ねえっ! こーた!」
腕をぶんぶんと揺さぶられて、現実に引き戻された。ひっぱられている腕をみると、かわいい少女が見上げていた。前髪がギザギザでなかったら、そしてボロボロのクマのぬいぐるみを持っていなかったら、たまだとわからなかったかもしれない。戻ってきたのだ。やっぱりそんなに簡単に成仏なんかするわけがない。
「紘大君、前、進んでるよ?」
永里が同じ手にキュッと力を入れて合図してきた。
「あ、ああ」
慌てて足を前に進めたら、脛をぶつけてしまった。そこからは階段だったのだ。
「痛ってぇ」とズボンの上から足をさすりながら、階段を上がる。
「大丈夫?」
「ごめん、カッコ悪くて」
「そんなことより紘大くんの足の方が大事だよ」と永里が笑って腕に絡み付いてきた。ふいに反対側からも、グイっと腕を引かれる。ちらりと横を見ると、やはりいつの間にか戻ってきた南由が唇を突き出してふくれていた。
永里が足を乗せた、鉄骨の階段がギシッときしんだ。
「きゃっ!」永里が小さく悲鳴をあげる。「やだ、ジェットコースターに乗る前から怖い!」
「平気か?」と声をかけたけど、永里を支える手は伸ばせない。南由が永里を睨んでいる。
このまま、急発進と旋回を繰り返すジェットコースターに乘ったらどうなるんだろう……。ひやり、と冷たい汗が流れた。
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