第147話
「ああ、だからね、コレ」とメモパッドを指先でつつく。「見つけたら、壊して捨てて欲しいんだよ。私にはできないから」
「壊せばいいんですね? わかりました。その代わりに、あの場所で昔、何があったのか教えてください」
「私も詳しくは知らないのよ。ただ……あの土地は九枝のお祖父さんがただ同然の値段で買ったんだよ。マンションが建つ前は平屋の小さな家が建っていたの。その家で、事件があったから、地主が売り払いたかったらしいんだ」
「やっぱり事故物件じゃないですか!」
「いや、だからそれは違うんだよ。その小さな家は取り壊して、マンションを建てたんだもの。それにさっきも説明したけど、南由さんが住んでいた部屋では、これまでなにも起こっていないんだし」
非難されると、肩をすぼめて、不愉快そうに会話を締めくくろうとする。
「ま、まってください。その昔の事件ってなにがあったんですか?」
「火事。あそこで、妊娠している女の人が亡くなったの」
「火元は……?」
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