第129話
社長は銀縁の眼鏡をはずし、指で瞼の上をもんだ。そして目を瞑ったまま言った。
「……壊して棄ててほしいのよ」
「……それでアレが消えるっていうことですか?」
「悪いけど、試してみたことがないからね。消えるかどうかはわからないけど、試してみる価値はあると思うんだ。だけどね、九枝の家の者には出来ないんだよ」
「できない……? なぜですか?」
「それはさ……、九枝があの土地を譲り受ける時の条件だったからよ。恨みを引き受ける、っていうことがね……」
九枝不動産から帰宅すると、メモに書いてあったものが何か、考えてみた。
社長が書いてくれたメモには、「えりぼむ」と書いてあった。聞きなれない言葉だ。
九枝不動産にいる時に、「あれって……なんのことですか?」と聞いてみたが、社長は黙って目を細めただけだった。言えない、そういうことなのだろう。
メモに書いてあったものを壊して捨てるためには、えりぼむが何かわからなければならない。えりぼむ。それともエリボムだろうか? スマートフォンの検索機能で調べてみても、それらしい情報は出てこない。もう一度、入力し直そうとE、RI、と打ち込んで手を止める。手近な紙を引き寄せて、アルファベットで書いてみる。「ERIBOM」。
そうか! 逆から読めば「MOBILE」、モバイルという単語になる! つまり、携帯電話の事じゃないか!
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