第114話
そうは言っても、南由の方は俺の心変わりを受け入れられないだろう。南由の時間は止まってしまっているのだから……。
どうしたらいいんだろう。俺は隣にいる永里にたわむれのように、手を伸ばす。すべすべした肌に、手をすべらせていると、「んっ」と永里が吐息をもらした。開いた口を唇でふさぐ。
永里の肌がほてり、白い肌にほんのり赤みがさしてくる。狂おしく唇を這わせようとして、ふとブレーキがかかった。熱くなりかかった胸の中に、ひんやりとした疑問がぽつりと落ちる。
「なあ、これが、この気持ちが、てんけいのせいじゃない、ってどうしてわかる?」
「だ、って」永里は俺を求めて体を押し付けてくる。「あの喫茶店で、紘大くんに初めて会った時から好きだったから」
言われてみれば、俺もそうだったかもしれない。最初に会ったあの日から、惹かれていたのかもしれない。ただ気が付かないふりをしていただけで。だからこの気持ちは、てんけいのせいなんかじゃない……。
ああ、やっぱり、南由をなんとかしなければ……。永里の肌に溺れながら、南由を邪魔者の様に思っている自分に気づいて、怖くなった。
罪悪感を忘れたくて、永里の肌に再び埋もれ、伝わる感触で頭の中を満たした。
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