第102話
『うるさい……。だまれ……。だまれ……。なゆがほしいの! おまえとその子はジャマ、ジャマ、ジャマ……』
「あ、ああ……」
のうみそ。脳、みそ。
脳は固体と液体の間、どろりとした泥状のようなものだっただろうか? そんなはずはない、と否定してみても、どろどろした脳を、子供の小さな細い手で、かきまぜられているような感触がある。そして見えない小さな手は、脳をかきまぜて、手の中に入り込んだドロドロを気まぐれに握りしめる。
「ぐあっ」頭痛が激しくなる。
それから、だんだん鈍く、弱くなっていく。
シャラ……と涼やかな音が痛みに混じる。そしてまた幼い高い声が誘惑する。今度はカサブタを、上から指で押すような……、快感。
『ほら……その子が欲しいんでしょ? あげる……あげる……あげる……うばっちゃえ……なゆは、すてちゃえ……あたしにちょうだい』
「こ……たく……だい……で……か?」
「……え?」
「紘大くん! 大丈夫ですか?」
はっと顔をあげると、永里が心配そうな顔で覗き込んでいた。いつの間にか、どこかの喫茶店の中にいた。テーブルの上には、いつ頼んだのか、アイスコーヒーが乗っている。
「ごめん。頭が痛くて」
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