第86話
「マンションの下でね、ボロボロのクマのぬいぐるみを持った女の子が夕方遅くとか夜中に、遊んでいるらしいよ。まりつきしたり、地面に絵を描いていたり。ひとりなのに、だるまさんがころんだ、って言っていたり……。それでマンションの住民が声をかけると、その子が見上げるらしい」
「ただ家に入れてもらえないとか。ネグレクト、っていうんですか? 親に放置されているような虐待児じゃないんですか?」
「うーん、聞いた話だけど、人間とは違うらしいね。それで『もう遅いから家におかえり』って言うだろ? そうすると『いいなあ、おうちにあったかいご飯があるんでしょ。家族がいるんでしょ、いいなあ、ほしいなあ……って」
「うわ……」
「それで、遊ぼうって、何回も言うんだって」
「遊んであげる人、いたんですか?」
「女の子の顔が、だんだん目がつり上がって怖くなって、崩れていくんだって。それで、あのマンションに住んでいると、頭痛がするようになるらしい」
「頭痛……」南由と潮田だけではなかったのだ。
「でね、すぐ出ちゃうのよ」
「幽霊が、ですか?」
「違う違う。入居者が、部屋を引き払っちゃうの。三年もった人なんて、本当にいなくて。お友達も、もう出ちゃったでしょ?」
「あ、いやあ……」
「もしかして、お友達って、あの事件の……? こりゃあ、悪いこと言っちゃったなあ」
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