第84話
三浦には「幽霊話を聞きたくないなら、帰ってもいい」と言ったが、付いてきた。永里に帰るつもりがまったくなかったからだろう。
三浦は永里が好きだから、俺と二人きりにはさせたくないんだ。わかりやすい奴だな、とこっそり苦笑してしまった。正確には店長もいるので、二人きりというわけではないが、おそらく、自分がいない場所で、俺と永里が一緒にいるのが嫌なのだ。
店長は運ばれてきたビールを、俺と三浦のグラスに注ぎながら「あんまり、気持ちのいい話じゃないんだよ」と話し出した。
テーブルには、フライドポテトとから揚げが一皿に入っているおつまみセットとほうれん草のバターソテーが並んでいる。
永里だけはソフトドリンクバーを頼み、アイスティーを飲んでいた。そういえば、南由は紅茶にはガムシロップを必ず入れていたが、永里はガムシロップもミルクも入れずに、ストレートで飲んでいる。
「さっきの人、九枝不動産っていうところのドラ息子なんだよ。賭け事が好きで、競馬とかパチンコとか。株もやっていてね、得意げにおススメの銘柄の話なんかしてくるけど、大体的外れ。
個人の趣味だから、他人がとやかくいうことでもないんだけどね。だから実際、店を回しているのは、女社長のお母さん。お父さんっていう人は、あの息子がまだ小さい頃に、亡くなっているんだよ。まあ、そんなことは幽霊とは直接関係ないから、どうでもいいか」
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