第82話
「嫌だなあ。
ヒョロっとした男が、店長の後ろから口を出してきた。男の細長いストローのような体型には見覚えがあった。通夜振る舞いの会場で店長と話していた男だ。
「……ちょっと酔っただけなんで」
「そうなの? 潮田さんの死因、原因不明の病、だなんてさ、怖いよね。君も変な病気をまき散らさないでよ、なーんてね」と調子よく、本音とも冗談とも付かない口調で言うと、「じゃ、店長、お先!」と、軽く手をあげると、そそくさと自動ドアを出て行った。
「ごめんね。あの人さ、地元の不動産屋の息子なんだよ。この辺じゃけっこう土地をもっているんじゃないかなあ? たまにウチにも買い物にくるんだよ」
と少し申し訳なさそうに説明した。店長は、あの男が俺に対して失礼な言い方をしたことを悪いと思ったらしい。
けれど、店の客だから、失礼な男だが邪険にできなかったと言い訳しているのだ。ストロー男の態度が悪いのは店長とは関係ないことなのに、人がいいんだな、と思う。
「不動産屋さんなんですか」永里が聞き返した。
「そう。うちの近くのマンションも持っているよ」
店長は話題が出来てホッとしたように、聞いていないことまで話し出した。
「不動産屋さんで、マンションも持っているんですか? お金持ちですねえ!」
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