第62話

 「待ってくださいよ。付け回していたなんて、人聞きが悪いなあ。誰だってしますよね? 気になった子の連絡先が分からなかったら、相手が立ち寄りそうな場所で待っているとか、そのくらいのこと」


 潮田はこちらを小馬鹿にするようにニヤニヤしながら言う。その程度のことでは、犯罪にならないと知っていて、わざと苛立たせているのだ。永里と三浦がいなかったら、殴りかかっていたかもしれない。


 「それだけじゃないだろ」

 「ボールがあたったんだ」


 潮田が笑みを消して俺を見つめた。


 「自業自得だろうが」

 「違う。天啓だよ」


 潮田の目が昏く光る。


 「てんけいぃ? なんだよ、それ」思いがけない台詞に声が裏返ってしまった。


 「南由ちゃんと僕は一緒にいるべきだ、って。『家族』は一緒にいるべきなんだって。聞こえたんだ。僕が頭を怪我したのは知っているだろ。五針縫ったんだ。それからね、たまに頭が痛くなる。いつも聞こえてるんだ。何をするべきか……」


 潮田の口元が幸せそうに緩み、笑顔になる。


 「だから声の言うとおりに、いつも一緒にいられるようにしたんだ」


 「馬鹿言うな! 南由はお前の家族なんかじゃない! いつも一緒にだって……? お前、やっぱり部屋を盗撮していたんだろ。カメラはどこに設置していたんだ。言えよ! 録画したデータはどこにあるんだ。出せっ」


 俺の体を押しとどめようとする永里と三浦を振り払い、潮田の胸倉を掴んでベッドに押し付けた。

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