第62話
「待ってくださいよ。付け回していたなんて、人聞きが悪いなあ。誰だってしますよね? 気になった子の連絡先が分からなかったら、相手が立ち寄りそうな場所で待っているとか、そのくらいのこと」
潮田はこちらを小馬鹿にするようにニヤニヤしながら言う。その程度のことでは、犯罪にならないと知っていて、わざと苛立たせているのだ。永里と三浦がいなかったら、殴りかかっていたかもしれない。
「それだけじゃないだろ」
「ボールがあたったんだ」
潮田が笑みを消して俺を見つめた。
「自業自得だろうが」
「違う。天啓だよ」
潮田の目が昏く光る。
「てんけいぃ? なんだよ、それ」思いがけない台詞に声が裏返ってしまった。
「南由ちゃんと僕は一緒にいるべきだ、って。『家族』は一緒にいるべきなんだって。聞こえたんだ。僕が頭を怪我したのは知っているだろ。五針縫ったんだ。それからね、たまに頭が痛くなる。いつも聞こえてるんだ。何をするべきか……」
潮田の口元が幸せそうに緩み、笑顔になる。
「だから声の言うとおりに、いつも一緒にいられるようにしたんだ」
「馬鹿言うな! 南由はお前の家族なんかじゃない! いつも一緒にだって……? お前、やっぱり部屋を盗撮していたんだろ。カメラはどこに設置していたんだ。言えよ! 録画したデータはどこにあるんだ。出せっ」
俺の体を押しとどめようとする永里と三浦を振り払い、潮田の胸倉を掴んでベッドに押し付けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます