第61話

 「だけどまあ、頭痛に悩まされるようになったのがいつからかっていうと、コンビニの駐車場で転んで頭を打ってから、ってことになるのかなあ。入院したのは、ここ最近だけどね。一か月前から急に頭痛が酷くなったんだ。」


 「やっぱり、あのコンビニでボールがあたったのはお前なのか」


 コンビニの店長から潮田の名前をささやかれた時、まさか、とは思ったが、やはり同一人物だったのだ。しかし加害者ではなく、被害者だったのは意外だ。


 「え? なんで知っているの? そっか。あのコンビニの店長に僕の名前を聞いたんだろ? あいつ、個人情報の漏洩ろうえいじゃないの、それ。でも僕は被害者だよ。ボールをぶつけられたんだから」


 「犯人は見ましたか?」と永里が聞いた。

 「いや……、防犯カメラも確認したけど、犯人は映っていなかったよ」


 見ていない、とはっきり言わなかったことが引っかかる。確認しようと口を開きかけたが、潮田が話し出したので口をつぐんだ。


 「三浦に誘われて行った飲み会で、南由ちゃんに一目ぼれして、連絡先を聞こうとしたんですよ。それで声をかけようと思って、あのコンビニまで行った。だけど……、邪魔が入ったからね。だから数日後に出直したんですよ。コンビニの駐車場に車を停めて、通りかかるのを待っていようと思ったんだけど、飲み物を買おうと思って車を降りたら、ボールが飛んできてさあ。ついてなかったですよ」


 「南由の事、付け回していたのはやっぱりお前なんだな!」

 「紘大くん、ちょっと声を小さく。病院ですから」


 思わず潮田に詰め寄っていたらしく、永里に肩を押し戻された。 

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