第59話
外の暑さから逃れるように、自動ドアを通り抜ける。受付で「お見舞いに来たんですけど」と告げ、渡された名簿に名前を記入する。にこやかな受け付けの女性は、「しおた……」と小さく呟きながら、タタっとキーボードに患者の名前をタブレット端末に入力すると、病棟と病室を教えてくれた。そして個室ですよ、と付け足した。
エレベーターで五階に上がると、部屋番号を確認しながら歩く。その部屋は、ドアが開けっぱなしになっていた。
「よ、よう、潮田! 入るぞ」
唯一の顔見知りである三浦が、明るく手を上げ、作った笑顔で病室に入ったものの、病人の顔を見るとすぐに不安そうな真顔になった。
「急に来て悪かったな。大丈夫だったか……? まだ具合が悪そうだな」と声をかける。
「大丈夫。まあ、座ってよ」と、潮田がベッドサイドに置いてある折りたたみの椅子を視線で指す。
「よくこの病院がわかったね」
「会社の総務部で聞いてきたんだ。ええっと。覚えている? こちら、一度飲み会で会っただろ? 二階堂永里」と永里を手で示した。
「覚えていますよ。だって、南由ちゃんの親友じゃないですか……」と、弱々しい微笑みを永里に向けた。
「潮田さん、あの」
永里は言い淀んで口をつぐんだ。それも当然か。白い顔をして、点滴のチューブに繋がれている人物に、あなたはストーカーをしていましたか? とはとても聞けない。
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