第58話 2

 暑い。駅の構内から出ただけで、汗が額ににじんでくる。俺は立ち止まって強い日差しに目を細めた。駅の改札は駅ビルの三階にあり、駅ビルを出ると大きな歩道橋に繋がっているため、近くには陽を遮る建物がないのだ。


 「タクシーに乗って行こうか?」と永里を気遣って聞いてみる。永里は立ち止まって、鞄から日傘を出して開いているところだった。

 頬と肩の間に日傘の柄を挟んで器用にスマートフォンを操作すると、「うーん、ここから潮田さんが入院している病院まで、歩いても七分くらいみたいですよ。近いから、歩きましょうか」と地図アプリの画面を見せてきた。


 隣から三浦が覗き込み、「歩いて三十分だったら、汗だくになりそうだから、迷わずタクシーに乗っちゃう暑さですけどね。七分なら、まあ」と同意する。


 大きな通りに出ると、地図アプリを見るまでもなく、道路に案内表示が出ており、迷うことはなかった。ほどなく青っぽいグレーと白を基調としたガラスの多い大きな建物が見えてきた。


 「建物が見えてからが遠かったね」

 「大きい病院なんだな」

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