第22話
「書き間違えても消せるから便利だよ」
「なんで書いた文字が消えるんだろう? 不思議だよね」
「摩擦熱で消えるらしいよ。必ずしも擦る必要はなくて、ドライヤーとかで暖めても消せる。逆に消したくないメモなんかを、車のダッシュボードに、うっかり置き忘れたら、真っ白になっちゃった、とかもあるかもね」
「それは危ないね! 気を付けないと」
「このメモは大事だから、置き忘れません!」
急に紘くんが、背筋を伸ばして宣誓するみたいに、片手をあげたから、私は口元をシャツの袖で抑えてクスクス笑ってしまった。
「本当は頭を整理するために書いているだけだから、消えても大丈夫だけどね。じゃあ、次ね。誰かが後を付けていることに、どこで気が付いた?」
「電車を降りて、一人で歩き出してからかなぁ。後ろから足音が聞こえたの。振り返っても誰もいないから、怖くなって」
「ああ、それは怖いよなぁ」紘くんは眉を寄せて頷く。
「それなのに、歩き出すとまた足音が聞こえるの。しかも私が歩くのに合わせているみたいに、近づきも離れもしないの。きっと、後ろを歩いていた人は、私が振りかえると、さっと物陰に隠れたんだと思う」
「我慢できなくなって走り出した」
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