第21話

 「あの日、私は会社の飲み会の帰りだったんだ。場所は佐神野さがみの駅前の洋風居酒屋さん。二次会はその近くのカラオケに行ったの」


 「メンバーは全員知り合いだった?」


 「ううん。本当言うと、ちょっと合コンみたいな感じもあってね。男性は初対面の人ばかりだった」


 「じゃあ、飲み会で会って、南由を気に入った奴が後を付けてきた……とかもあり得る?」


 「ない、とは言い切れないけど、ないと思うけどなぁ。そんなに親しくなった人はいなかったし……」


 「南由は天然だからなぁ。気が付かなかったんじゃないの」


 「連絡先を交換した人だっていなかったもん」


 「だからだよ。連絡先を手に入れていたら、後を付ける必要なんかないだろ。今日は楽しかった、でもなんでも、メッセージを送ればいいんだ。連絡先を知らないっていうことは、次に会える保障がないってことだろ。だから後を付けたんじゃないか?」


 「あ……なーるほど、そうかあ……!」


 思わず納得、と人差し指を立てて頷くと、紘くんはくすりと笑みをもらした。


 「誰が来ていたのか、わかる?」

 「覚えてない。連絡先も持ってないし。でも永里なら知っていると思う。幹事だったから」


 「永里さんね。聞いてみるよ」と、紘くんは手帳に永里の名前を書き留めた。そしてペンをくるりと回し、上の部分でコツ、コツ、とノートを叩いた。


 「そういえば、いつも消せるボールペン使っているよね」

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