第20話
それとも、アスファルトが古くて波打っているし、ところどころひび割れているから、ボールをつきにくいのかなぁ。
気になって音がする方に行ってみたら、女の子が二人、遊んでいたの。幼稚園くらいの子と十五、六歳位の子。だからその子達を見かけた時は、いつも声をかけるようにしているんだ。
夜遅くに外にいたら、危ないでしょう? だから、早く帰った方がいいよ、って。あの子達、年は離れているけど、姉妹なのかな。顔がどことなく似ているし」
あれ? でもどんな顔だったかな。思い出せない。なんで……? いつも会えばわかるのに……。
急に黙り込んでしまったから、紘くんが「どうしたの?」と心配そうな顔をした。
「ううん、なんでもない」
あわてて、首を振る。別に大したことじゃない。人の顔を覚えるのは苦手だもの……。
「何回か声をかけていたらね、私のこと、覚えてくれたみたい。私を見かけると遠くから走ってきて、抱きついてくるの。かわいいよね」
「へえ。俺と会った日もその子達はいたの?」
「ううん。その時はいなかった。たまにしかいないの。紘くんと初めて会ったあの日は、やっぱりもう暗くなっていたよね。えっと。夜九時を回っていたんじゃないかなあ」
「そうそう。あの時、俺は十時からのテレビ番組が見たくて、その前にビール買ってこようとコンビニに行ったんだ。だから大体九時過ぎで合っていると思う」
紘一くんは、ノートに時間を書き込んだ。
「あれって、一昨年のいつだっけ」
「えーとね。七月の半ばくらいかなあ? 日付は覚えてないけど、ボーナスがもうすぐ出るなあ、って思ったこと、覚えている」
「ゲンキンだなあ」紘くんが笑う。やっと笑ってくれた、と思って嬉しくなる。心配してくれるのは嬉しいけれど、やっぱり笑ってくれる方がいい。
紘くんは七月半ば、とノートに書き加えた。
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