第19話

 紘くんにしては珍しく、私の言葉に被せて声を荒げた。


 「ごめん。一番辛いのは、南由なのにな」

 「ううん。心配してくれたんだもんね。ありがとう」

 「俺、調べるよ。犯人」

 「危険じゃない?」


 紘くんはふっと目を細めて、柔らかい目で私を見た。

 それから「大丈夫。気を付けるから」と、ノートを開いて愛用の消せるボールペンを手に持った。


 「じゃあ、最初から考えてみよう。なにか手がかりが見つかるかもしれないから」


 「わかった」

 「南由はもともと、あのうす暗い通りが怖いと思っていたんだろ?」


 「うん。住宅街だからね。夜遅くなると、ほとんどの家はシャッターを閉めちゃうから、街灯はあるけど、道が薄暗いの。家の門塀とか物陰も多いし、誰か潜んでいても分からないような感じがするんだよね。

 だから帰りが遅くなるときはいつも、早足で通り抜けるようにしていて、途中のコンビニに着くと、やっと一息つくっていう感じかな。あのコンビニは夜道のカンテラみたいで、遠くから見えてくるだけでなんとなく安心できるんだよね」


 「あの日までは変わったことはなかった?」


 「そういえばね、薄暗い通りだし、時間も遅いのに、アスファルトにゴムボールの跳ねる音が聞こえて来る時があってね。ボールをつきながら走りたいんだろうけれど、音から推測するとまだ慣れてなくて、上手くボールがつけない感じ。

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