第541話 達成度
「……死んでもまだ硬いな。いい素材になりそうだ」
ダンゴムシの《虫の魔物》の亡骸を解体しながら、俺はそう呟く。
《虫の魔物》素材は当然のことながら、ここでしか手に入らないだろうから、市場に流してもいい値段がつくだろう。
企業に売ってもいいし……ある程度確保したいと考えていた。
まぁ、ここの情報はまだ外部にはほとんど伝わっていないから、一般的な需要はまだあまりないのだけどな。
それでも、
盾や鎧にすれば相当な品になるのは明らかで、欲しがる人間は絶対にいる。
「魔力で強化していた、というわけじゃなくて、純粋に物質として硬いのかしら? それとも、ここから強化してあの硬さに?」
雹菜はそう言いながら、剥がした《虫の魔物》の殻の端っこの方を細剣で切りつけた。
「あっ、切れた。硬いは硬いで間違いないけどやっぱり魔力ありきね。これなら加工もしやすそう」
「なぁ、それはいいんだけど……中身はどうする? 食べれると思うか?」
「……食べるの? うーん……でも、ここじゃないけど、虫系の魔物は食用に出来るものも多いのよね……一応、小分けにして持ち帰りましょうか」
「ここで味見とかしなくていいのか?」
「……毒とかあったら怖いじゃない。それに牛とか鳥とかの魔物だったら食べてみようかなって気になるけど、流石に虫には食欲が湧かないわ……専門家に任せて、調理した上で出てくるなら普通に食べるけど」
「確かにそうか。じゃあ小分けにするだけで……」
それからダンゴムシを解体していき、収納袋からいくつものビニール袋を取り出し、部位ごとに入れていって、そのまま収納袋に突っ込む。
「よし、じゃあもう少し歩くか」
「そうね。今の一匹だけじゃないでしょうし。カルツ山を通った人たちの話を街で聞いてきたけど、ダンゴムシっていうより、カマキリとかの《虫の魔物》がいたって話を聞いたし、それが発見できない限りは帰れないわ……それに《ステータスプレート》を見てもそれで間違いないでしょうからね」
そう、カルツ山に出現した《虫の魔物》を倒して欲しい、という依頼を受けたが、別に一匹しかいないとは言われていない。
加えて、俺と雹菜の《ステータスプレート》を見るに、《サブイベント》欄には、
カルツ山道の魔物退治:カルツ山道にて《虫の魔物》の出現が相次いでいるという。ここは商人たちが使う街道にも程近く、流通が滞る危険もある。《虫の魔物》を全て退治して、カルツ山道の平和を取り戻そう。達成度《★⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎》
そう書いてある。
つまり、これはまだ達成出来ていない、と理解すべきだろう。
もしかしたら、報告に戻ったら、いきなり達成度が全部★で埋まる可能性もあるが、そうでなかった場合、二度手間になる。
少なくとも多少、探し回るくらいのことはしてからの方が良さそうに思えた。
それにしても、街で受けた他のサブイベントだと、達成度はすぐに上昇していたが、魔物退治系だと魔物の数で上がっていくのかな?
分からないが、ギルドメンバーに伝えるためにはその辺りについてもできる限り詳しく理解しておいた方がいいだろう。
そう思って、俺と雹菜は山道を再度、歩き出す。
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