第443話 魔眼
「……色々試してみたけど、《魔氷人》種族は氷術系統に強い親和性を見せるみたいね。いつもより消費が少ない上、威力も出やすいわ。身体能力も、ジャドが言うように上がったみたいだし……見た目さえもう少しどうにかなるなら、これが一番いい種族なんだけど……」
雹菜が悩ましい表情でそう言った。
確かに見た目はな。
髪色は白髪で、目は白目部分が黒く、瞳は赤く、さらに頭には角が生えていて……となるともう完全なるコスプレにしか見られない……あぁ、コスプレか。
「外ではコスプレって言い張ったら良いんじゃないか? ジャドはゴブランでは《魔族》がいたっていうけど、地球じゃ目撃例がないし」
そうなのだ。
《魔族》は地球において目撃されたことは一度もない。
少なくともジャドが言うような種族としてのそれは。
魔物とか全てを総合して、魔族、とかいうことはあるけれども、ジャドの言う《魔族》とは別なのは言うまでもない話しだしな。
「うーん? まぁ確かに……。一瞬ビクッ、とされるかもなぁくらいな見た目だしね。そもそも、今の地球じゃ普通にゴブリンが歩いているわけだし、これくらい今更かも……?」
「そうそう。気にしなきゃいいんだって」
さらに、黒田さんも、
「そもそもなんか神秘的で可愛いと思うよ。ダークな気配もアリアリだけど」
と言う。
確かに何か不思議な存在感というか威圧感というか、そういうものはあるな。
雰囲気的に。
魔力の圧力というのもあるが、これについては雹菜は自由に抑えられるみたいだし、問題ない。
「そのダークな気配がどうなのかって気がするのだけど」
「街中にはたまに暗黒騎士!みたいな鎧着てる人たちだっているんだから今更じゃない?」
「そう言われると……そうかしら?」
冒険者は皆、基本的に変な格好をしいているしな。
武具を纏って出歩いているわけで、非日常的な存在だが、それがみんなの日常になってしまっている。
それに最近は《転職の祠》を使って各地から色々な人がやってくるので、色物系の格好の人だって珍しくないのだ。
それこそゴブリンだっているし、妖人もあの見た目で普通にアンテナショップやってるし。
俺と似たようなことを考えたのか、雹菜も最終的に、
「……そうね。別にいっか。じゃあ、私はしらばくこれでいることにする」
そう言ったのだった。
それから、
「じゃあ、次は《魔眼人》よね、静」
そう言って静さんに目を向ける。
彼女は頷いて、
「分かりました。雹菜を見る限り、魔、がついているからといって理性を失うみたいなことはなさそうですしね……」
そう言いながら、《ステータスプレート》の該当部分をタップする。
すると、彼女の周囲にいきなり沢山の目が出現して包んだ。
「うわっ、グロ……」
と思わず黒田さんが叫ぶが、静さんには聞こえていないらしく、無反応だった。
というか、目に包まれてしまったので、反応も見えないが。
そしてしばらく立つと、そこには先ほどの雹菜と同じような雰囲気になった、静さんが立っていた。
つまり、髪色は白髪で、白目は黒く染まり、瞳は赤色、頭には一本角が生えていて……とそういう見た目だ。
やはりこれも《魔族》の見た目なのだろうか。
魔、がつく種族は、《魔族》だと考えてもいいのかもしれないな。
「……確かに、少し精神が高揚するというか、攻撃的な感じ、と言われると納得いきますね」
静さんがそう言う。
「他に何か変わったところは?」
雹菜が尋ねると、静さんは、
「……額に、目があるようです」
そう言って、自分の額を指さした。
すると、つるつるとしたそこに、横向きに亀裂が走る。
そして眼球が現れた。
「……第三の目……」
つまりはそういうことなのだろう、とそれで分かる。
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