第55話 雹菜のステータス
名前:白宮 雹菜
年齢:17
称号:《B級冒険者》《白の氷姫》《若者達のアイドル》《インフルエンサー冒険者》……
腕力:102
魔力:140
耐久力:158
敏捷:192
器用:123
精神力:79
保有スキル:……《下級汎用術》《最下級氷術》《下級氷術》《中級氷術》《上級氷術》……《魔力強化》……《上級細剣術》……
保有アーツ:《氷姫剣術》
「……いや、人の事どうこう言う前に、雹菜って結構な化け物では……?」
雹菜の《ステータスプレート》を見て、ついそんな言葉が出てしまったのは仕方のないことだろう。
彼女はそんな俺の言葉に少し苦笑して、
「女の子に言うに事欠いて化け物はひどいじゃない……でも、言わんとすることは分かるわ。冒険者というのは一般人からかけ離れた力を持っている。そう言われていても……実際にこうして数字ではっきり突きつけられると、私って人間辞めてるわねって思わずにはいられないもの」
少し悲しげというか、自嘲気味なのは、まさに自分で言った通りの理由からだろう。
具体的には、そもそもステータスの数字からしてとんでもなかった。
俺の器用と精神は色々とアレなので例外として置いておくとして、雹菜は全ての数値が平均して高い。
通常の人間の平均は5ということだから、彼女は腕力からして単純計算で常人の二十倍以上あるということになる。
握力計なら600キロ出せてもおかしくないということだ。
そんな握力計があればの話だが。
いや、さっきの話からすると、そう単純な話ではないとは言っていたから、そこまでではないにしても……それでも、この数値はやはり凄い。
ただ、俺の言い方もだいぶ良くなかったので、とりあえず謝っておこうと思った。
「悪かった。初めてこんな数字見たから……」
「でしょうね。見せてもらったのは、クラスメイトのだけでしょ?」
「あぁ。慎と美佳、それに不用心と言うか、オープンな奴らが結構見せてくれたのだけだな。数字の平均は確かに20いってれば優秀なのかなって感じだった」
「で、私はほぼ全部100を超えてる、と。実際、これって結構高い方みたいなのよね、B級の中では。A級だと流石に普通にこれも超えてくるのだけど」
「そうなのか? これ以上ってなると……」
「それでも流石に700とかはいなかったわよ。具体的にはこれ以上言えないけれどね。うちのギルドでA級って言ったら、もうほとんど特定できちゃうし」
「あぁ……代表冒険者の人たちか」
「そういうこと。でもだいたいの感覚は分かったでしょ?」
「基準になりそうで、ありがたい情報だよ。ま、俺は絶対に不用意に器用と精神を他人に見せられないのも分かった」
「その方がいいでしょうね」
「で、雹菜の《ステータスプレート》で他に気になるのは、やっぱり称号かな? スキルの多さが凄まじいのも尊敬が湧くけど」
かなりの数のスキルが最下級から上級まで修めている。
相当な才能がなければ不可能な数だ。
それに、スキルは才能があればそれだけで身につけられるものでもない。
一定回数繰り返したりするなどの努力が必要で、つまり雹菜はそれだけの訓練や実戦を経てきたということだ。
B級なのだから当然といえば当然なのだが、それだけに本当に尊敬することだ。
「スキルはね、小さい頃からの積み重ねよ。称号は……なんだか馬鹿にされてるような気がするものが多いのだけどね……」
「《白の氷姫》とかカッコよくないか?」
高校生だがまだ厨二病に罹患している俺からすればちょっと羨ましかった。
俺にも称号はあるけれど、少しワクワクするような名称だけれど、でも、一発でなんかすごい感じ!となるかといえばそうでもない。
よくわからないけどすごいかもしれないみたいな得体の知れない称号だ。
しかし雹菜のものは分かり易い。
「……漫画じゃないんだから」
けれど雹菜自身はため息を吐いて、少し恥ずかしそうであった。
「高校生にしてB級冒険者、その上、若者から大人気の美少女、って存在こそ俺からすると漫画じみてるんだが」
「……美少女って。大したもんじゃないわよ……」
呆れたような表情で、本気で言っているらしかった。
あまり自分の見た目を評価していないのかも知れない。
とりあえず話を少し変えて、
「アイドルとかインフルエンサーとかは今どきだな。こんなのも称号に付くのか……」
「神様が作ってるのかなんなのか分からないけど、意外に流行にも敏感なのかも知れないわ」
「そんな神様いやだが……うーん、会えるなら聞いてみたいな……」
「なんでこんなの称号にしたんですかって? ふふ。迷宮とか魔境を攻略し続けていれば、いつか会えるかもね」
大して信じてもなさそうな口調で、そう言った雹菜だった。
「そんな日が来たら面白いんだけどな……ともかく、称号についてはまぁ、いいとして、雹菜。あえてここまで突っ込まなかったけど……アーツ、持ってんじゃん……」
「あ、気づいた?」
称号について触れられた時は打って変わって、可愛らしい微笑みを浮かべて雹菜はそう言った。
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