　千葉県の、住宅地の中にある林から、遺体が発見された。

　見つけたのは早朝に犬の散歩をしていた男性だった。

　その一週間前、関東地方では珍しく大雪にみまわれ、その後も気温が低く、路面が凍結し、積もった雪がしばらく残っていた。男性が散歩に出るのも久しぶりのことだった。

　遺体が見つかったのは、雪が溶け、泥状になった土を犬が掘り返したからだった。

　いつもは伐採された枝や抜かれた雑草がまとめて置いてある場所で、雪の重みによってのそれらの位置がずれ、新しく露出した部分の土だった。

「人の手のようなものが土から出ている」という通報から三十分しないうちに、警察官が数人駆けつけ、青いビニールシートで発見場所を区切った。

　スコップで慎重に掘り出すと、焼け焦げ、四肢を折り曲げた遺体が出てきた。顔はおろか、年齢や性別も分からない状態だったという。

　現場周辺を調査すると、遺体が埋めてあった箇所から一キロメートルほど離れた川の中から、鞄が見つかった。鞄の中には、財布やハンカチがあった。

　財布の中には、現金の札は抜かれたのか、一枚もなかったが、ポイントカードやクーポン、そして運転免許証が残っていた。

　その免許証には、「辻村優」と記名があった。

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