オマケ~強制参加魔女会議?
――しまった!
自分の家を出た、落合一夜は警戒していたが、隙を突かれてしまった。
目の前の雰囲気は、
いくら中部の片田舎でも、まばらに背の低い木が生える草原のような場所はない。ましてや、足下はスモークでも焚いたような霧が覆い尽くしている。
異次元に飛ばされたことは、すぐに分かった。
見上げると、空は雲に覆い尽くされているが昼のように明るい。霧なのだろうか、10メートルほどの視界のみでその先は真っ白だ。
彼女は知っている場所だ。
どう作られた異世界かは置いておいて……大昔、魔女達が他の人間にバレない『
なので魔女なら、この異次元に入る方法は知っている。そして出る方法も――
「すぐに戻れば!」
振りかえったが、先程、自分が閉めたはずの玄関のドアは後方にはない。
1番手っ取り早く、現実世界に変える方法は入り口から戻ることだ。しかし、この世界に彼女を連れ込んだ人物は、入り口を消してしまったようだ。
「誰よ! 今から用事があるっていうのに!」
次に帰る方法。ここに連れ込んだ人物と一緒に帰ること。
とはいっても視界も悪い。人なんて――
「一夜ぁ~……」
「きゃあッ!」
急に後ろから影が覆い被さってきた。
一夜に覆い被さってきたのは、長身の女性だった。
バレー部にでもいそうなぐらい180センチは軽く超えている。長い黒髪は重く、腰まであり、顔を半分隠していた。髪の間から見える顔は、長身の体格に対して不自然なぐらい青白い。
そして、まさに魔女といった格好をしていた。紺色のローブに、ツバの広い魔女帽子。
「一夜センパぁ~イ。やっと捕まえられたぁ~……」
「桃子ッ! アンタが連れ込んだの!?」
「そうですよぉ~。いつも一夜先輩が来てくれないから、皆さんお怒りでぇ~」
なんか間延びした口調をしているこの魔女は、一夜の後輩のようだ。だが、身長も体格も、正逆……失礼、話を続けよう。
「ちょっと、何飲んでいるの!?」
鼻を摘まみながら、一夜は問いかけた。
そういえば、魔女桃子は片手に瓶を掴んでいた。
「いつもの滋養剤ですよお~」
「いつものって、あれには――」
「それ以上、言ってはいけませぇ~ん」
人差し指を立てて、魔女桃子は一夜の唇を塞いだ。
「さあぁ~、センパイぃ~。皆さんお待ちですよ」
魔女桃子が長い腕を振り、彼女を案内するかのように行き先を指した。すると、足下の霧が晴れて道が現れる。
そして、全体を包んでいた霧が一部だけ晴れはじめてきた。よく見ていくと、大きな木の周りに人々……魔女達が集まっている。
そこからはガヤガヤと、話し声……いや、宴会の騒音が聞こえだした。
「毎年、呼んでも来ないって、強制的に連れてこいって言われたんですよぉ~」
「アタシには地主神の手伝いが――」
「知っていますよぉ~、異種族の子に手伝わせていることぐらい。その人達に、やらせればいいじゃないですかぁ~」
「だから、アタシが陣頭指揮を……」
「とれるんですかぁ~……センパイがぁ~……」
「とれるに決まっているでしょ! 上からのぞき込まないで、怖いから……」
「ヒドイ。カワイイ後輩魔女をいじめるなんてぇ~」
「かわいいっていう体格か! 嫌がらせのような身長をして!」
「ヒドイぃ~、人が気にしていることを、皆さん! 一夜センパイがいじめてきます!!」
「わっ、声を上げるな。アタシはとっとと現実世界へ……」
一瞬、宴会が静まりかえった。途端、魔女達が、一斉に一夜を取り囲んでくる。
「いやぁ、一夜久しぶり! 金返せっ!!」
「落合、この前貸した本がまだ返ってきていないのだけど……どうなったの?」
「一夜ちゃん久しぶりねぇ、まだ色々と借りがあるので、じっくりと今日は……」
とまあ、このようにして担ぎ上げられた一夜は、輪の中央へと運び込まれた。
年の暮の魔女会議……という名の打ち上げ宴会に――
12時発、1時着。時間厳守にて。 大月クマ @smurakam1978
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます