第3話・ポスティングの話
家のポストにチラシが入っていることはありませんか? その中に携帯電話のチラシが入っていたことはないでしょうか?
都心や駅前のショップなら、ティッシュにチラシ詰めて手配りしているかもしれませんが、郊外のお店の場合はポストにチラシを入れて回ることも多いです。ポスティングってやつです。
駅前のティッシュ配りも実際にやってみたら大変なんですよね。全然さばけないと正直かなり凹みます。何よりも配り切らないと店に戻れない。
そして、あのティッシュにチラシ入れるのも一手間なのです。チラシをティッシュの大きさにペキペキ折って、一個ずつ中にセットして、また箱に戻して……。
私はどちらかと言えば郊外の店に勤務することが多かったので、チラシと言えば手配りではなくて、ポスティングでした。
正直、ポスティングって入れられる側にしてみれば、すごい迷惑行為だと思います。溢れ出たチラシが通路に散らばってしまったりもしますし、そうでなくてもゴミが増える。
でも、携帯電話屋は店で黙って待ってるだけではそんなには売れない。だって携帯電話ってどこでも買えるじゃありませんか?
ショッピングモールの中のショップなら、買い物のついでに機種変更して、帰る時に預けてた携帯引き取って……なんてこともできますし便利です。
がっ! 郊外にぽつんとあるショップはそうは行きません。車が無いと行けないような超郊外ショップだったらなおさら。
そういう超郊外の店員さんは平日の暇な時にせっせとチラシ折って、そのチラシに手作りの割引券なんて付けたりしてポスティングです。便利なショッピングモール店に打ち勝つには割引券作戦です。
便利じゃないけど、うちは安いですって。
で、このポスティングなのですが、これまた怖いことが多いんです。携帯屋さん=怖いことだらけって訳じゃないと思うのですが、多分、きっと……。
まず初歩的な怖いことと言えば、マンションの集合ポストに迷惑チラシ対策で貼ってあるポスターでしょうか?
『警告:チラシ投函は見つけ次第、警察に通報します!』
初めて見た時、自分は何て悪どい職業に就いたんだろうと後悔しました。け、警察に通報?? 当然、私はそういうマンションには配りには行きません。集合ポストを見たら即効警告文が貼ってないかを確認します。
なんせ小心者ですから……。
それでもそういうマンションのポストもチラシで溢れてたりするんですよね。多分、チラシだらけなのって空室のポストじゃないかな。配ってる人、すごいなー (こういう変な感心の仕方してしまうようになったのも、職業病?)
あと、管理人さんのいるマンションの場合は、管理人さんがいない時に配って見つかって怒られるということもよくあります。
下手したら、入れたやつを全部出せと言われることもあるんです。
でも、入れてる時に怒られるのはまだマシです。全部出せと言われることなんてほんとに稀ですから。入れてしまったチラシを見て後から電話でクレーム言われるとかなり凹みます。
クレーム言われたマンションは覚えておいて、次回からは避けるようにしなくてはなりません。
管理人さんが居られる時は勿論、きちんと店舗名を名乗ってから「ティッシュなんですけど、配らせてもらってもいいですか?」 とお断りしてからポストに入れていきます。
この時、「チラシなんですけど」と言ってしまうと、断られる可能性大。あくまでも私が配っているのは”ティッシュ”なんですね、すごい姑息な手ですが。
そしてちょっと多めに管理人さんにもティッシュをお裾分けしておきます。
マンションのポスティングの一番の恐怖は、集合ポストは必ずと言っていい程に薄暗いこと。外から死角になりやすい場所にあるのが多いこと。別に死角になりやすいからって何が起こるって訳でもないのですが、精神的に怖い。
だって『見つけ次第、通報します』って張り出されるような行為をしているわけですから。もし住人さんと出くわしてしまったらとかビクビクしながら配り続けてるんです。別に出くわしてしまっても怒られたことなんて実際は無いですけど。
「こんにちは」とあえて爽やかに挨拶なんてしちゃったりするんですが、でもやっぱりドキドキしてしまう。あの集合ポストの薄暗さが、なぜか後ろめたい行為をしている気分にさせてくれるんです。
逆に、一戸建ての立ち並ぶ住宅街の場合は、マンションに配るよりは気分的には楽です。薄暗いところで配るわけではありませんし、天気が良ければ散歩してる気分にだってなることも。そんな爽快なポスティングなんて、稀なことですけど。
住宅街のポスティングでの敵はいたるところに潜んでいます。
まず、犬。 それもポストに入れてる時に不意に吠える犬。いきなり間近で吠えられて、かなりビビリます。遠くにいる内から吠えてる犬は平気。
でも、密かに門の傍にいて、今まさにチラシいれちゃってますって時に「ワン!」って……心臓に悪いです。繋がれてるかのように見せかけて、実は放し飼いだったりすると最悪です。
両手に紙袋を2つも3つも持って、そそくさと各家々にチラシを入れ回ってる私は、犬からしてみればとてつもなく怪しいらしく、かなり高確率で追いかけられます。
夕方近くのポスティングの敵は、小学生。人懐っこいのか何なのか分からないような子供が「何してんの?」とひたすら追いかけてくることも。
住宅街のポスティングはマンションに比べたら怖いことは少ないですが、半端じゃなく時間がかかります。なんせ家を一軒一軒回らないといけないですから。
マンションだったら一棟で200世帯とか平気で配れてしまうことだってあるのに。
私の平均ペースは3時間で500軒くらいだったかと思います。住宅が密集していて比較的配りやすい場所で。旧家が多かったりして一軒一軒が大きくて隣との距離があったりすると、2時間で100軒もいかないことだって余裕であります。
夏の暑い時や冬の寒い時にチラシを配っていると、郵便屋さんって大変だなぁ、これが毎日毎日だもんなぁとしみじみと思いました。
後日に知り合った郵便配達の人に聞いてみたら、集配範囲も割と狭く、毎日同じルートだから意外と楽らしいです。しかも自転車とかバイクで、だから。
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