第7話 転生者の知恵を借りて町が活性化していく。

その後も役所内で検討を重ね、市場や商店街に告知をし、銀行と連携を取って準備をし、あと数日で施行日というところで、


「えっと…ムスタファさん、銀行から電話が入っています。そちらに回しますか?」

「んん?なんだろ?…はい、もしもし…。」



先日の、頭取の話にあった、相談役になった転生者の商人の方から、なんと、税金の前払いがあったそうだ。


「書類も全部揃っているそうで、これから役所に持ってくるんだそうだ。えぇと、財務の人、受け取っておいてくれるか。…、うん、…そうだな。その方が良いだろう。…ああ、それじゃ。」


なんと、なんとありがたいことだ。

税のシステムを理解している人は、この町ではおそらく転生者しかいないだろう。その人たちが率先して手本を見せてくれて、市民の人々がそれに倣(なら)ってくれたら、このシステムはうまく機能するようになるかもしれない。





*  *  *




この税収システムは、大都市でも似たようなシステムはあったらしいのだが、現在では機能していなかったり、詐欺まがいなこともあったりで、市民までは浸透していなかったようだ。なので、大都市と言えども、その財政については、本当は実態はよくわからない。



その点、ウチの税収システムは、簡単で分かりやすい。メリットと、デメリットのカバーを明確にしているので、数か月で町のほぼ全域に浸透したようだった。

それも、転生者とみられる方々が、すでに身についている知識らしく、お金を支払うことに躊躇もためらいもないのが驚きであったのと、その転生者の方々が著名な人が多いので、それを真似する市民も多かったことも助けられた。



そしてなにより、手数料に比べて税収の方が、2倍以上の収入になったことだった。



実は、この町での手数料制度も、店舗の手数料は、ものすごく高かった。最大25パーセントくらいにしたんじゃなかったかな。建物を作った費用も含んていたから、必然的に高くなってしまったのだ。

それに対して、無料スペースで、最近多くなってきた宝石商が商品を並べているところもあって、そちらは手数料が取られない。周りからかなり不平不満があったのが実情だったのだ。


手数料のシステムも数年前の金額から変えられなかったこともあるが、

町が発展してきた10年前から、人口も増えて交易の儲けは増えていたのだが、町の建物やスペースの手数料だけで賄ってきていた。


そうなると宿屋や大規模店舗だけをこれ以上値上げすることは難しい、

無料スペースでの高額商品は素通り状態、

市場以外の場所での商売は把握できない、

実質、横ばいの推移でしか無かった。それが、この町の赤字財政の原因でもあった。

正直言うと、お手上げだったのだ。



それが、この税制のおかげで、すべて問題解消できたのだ。



やはり、転生者の存在、只者ではない。

別の世界から来ているという、個々の証言、本当なのだろうな。

向こうの、得体も知れない世界の方は、よほど文明が栄えているものなのだろう。

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