第6話 この町で、税制度の導入を決定します。

「手数料制度、どういう形にしたらいいかを、ちょっと迷ってるんだ。」


昨日の休みの時に見た、町の活気づいた様子を見ていた。イベントがあるときは、あのように人で溢れかえる。そうすれば、町は繁盛する。そうしたら、お店は儲かる。

ただ、その儲かり具合は、お店によってまちまちだ。立地もそうだしジャンルもしかり。

公平に手数料を頂ける方法として、どういった方法があるか。すると、秘書が、


「お金に関することだったら、やっぱり銀行に相談するのが良いでしょうね。」


…、そうだよな。そりゃそうだ。

餅は餅屋だ。そのまま相談すればいいのか。


「そうだそうだ。よし、行ってこよう。…あ、デフネさんも連れて行こうか。」


*  *  *


「ムスタファさんとデフネさん、二人が訪ねてくるなんて、珍しいですね。よっぽど何かあったのかと勘ぐってしまいましたよ(笑)。」


銀行の頭取、エージさん直々にお茶を運んできてくれた。

役所の財務担当であるデフネさんも、銀行には何度も来てくれている。


「あぁ、お構いなく。…今日のお茶は、なんですか?嗅いだことのない香りですね。」

グラスに入った、薄い茶い色のお茶を手にしてみた。

「これは山の向こうから来たお茶ですね。ダィジリンという名前のお茶だそうです。私も先月飲み始めて、すっかりお気に入りになりました。これは流行りますよ。」

「あら~、それはお高いんじゃないですか?」

「あぁ、よければ、サンプルでひとつ差し上げますよ。いままた次の便が、この町に運んでくるところなんだそうです。」

私たち二人は、初めて飲むお茶…。たしかに、美味しい。このお茶は、飲んだことが無い。

「流行るかもしれないけど、そんなにたくさん運べるわけではないでしょう。保管場所も限られているし。」

「そ・こ・は。私ども銀行が融資をしていま…あぁっと、いけないいけない。この先は企業秘密でして。」

と、口の前で両手の人差し指をクロスした。

「あーっ、残念(笑)。…とまあ、冗談はおいといて。」



いまの町で手数料制度を行っているが、ハッキリ言うと、赤字なのだ。将来性も見据えた、新しい手数料制度を実現したいことを考えていると、エージさんに話をしてみた。やっぱりお金の専門家。顔つきが最初から真面目な顔つきになった。

「なるほど、税金ということですか?」

「ん?ゼイキン?なんですかそれは?」


「いわゆる、ムスタファさんが考えているような仕組みを『税』、その手数料金のことを、税のお金、『税金』と呼ぶのです。」

「税金…、そんな言葉、聞いたことが無いですね。」


「そうですね。私も少し前までは考えていなかったのですが、この町も大きくなっていくのを見ていると、徴収制度をちょーっと考えなければと思っていたんです。そんな時に、この銀行のお得意様から、税金の話を聞きましてね。」

「お得意様?」


「モンスター討伐で賞金をかなり稼いでいた冒険者の、同行者で商人の方がいましてね。今ではこの銀行の相談役になってもらっているんですが、金融に関して知識が豊富でして。」

私とデフネさんは、顔を見合わせた。


「(その方って、たぶん、)」

「(転生者、だろうな)」


「銀行にこれだけ預けていると、税金取られるんだろう?と話を持ち掛けられたのがきっかけですね。私どもも知らなくて、そのような仕組みは無いと話をすると、なんていい国なんだって、すごい喜ばれていたんです。」

「まあ、手数料はあるから、それについてはね。」

「それが、その方も商売の規模がどんどん大きくなって、預金高もものすごい額になってきたんですよね。そうしたら今度は、税金があった方が良いんじゃないか、と話をしてこられるようになりました。そこから、税金というモノの仕組みや方法を教えてもらっているんですよ。」



ここから先は専門用語がビュンビュン飛び交って、私は話がついていけなくてさっぱりなところもあったのだが、さすが財務部のデフネさん。メモをしっかりとっていっていた。要するに、今ある手数料制度を税制度に、完全に切り替えた方が良いという結論だそうで。



新制度の大まかな内容は、だいたいこうだ。


お店の大小に関わらず、利益の10分の1を税金にするという方法。

これは自主申告が大前提で、お店が銀行に申告納税するという方式にする、ということ。

その申告内容を、銀行から役所に報告する。役所は直接のお金の受け渡しなどはしない。銀行に任せる。


税金の管理作業は、役所と銀行がそれぞれ分担して行う。

銀行はお金の直接のやり取り範囲を受け持つ。

役所は申告の書面の管理を行う。


今まで行っていた手数料制度は全廃し、市場の管理費や場所代も全廃し、店舗管理も無料開放することになる。

場所に限らず、商売を行う人は(売り上げが有る無しは問わず)、金額に関わらず申請を必ず行うことにする。

(なので、商売であるなら、移動できる屋台や、訪問する形態、芸術を披露する分野に至るまで、あらゆる人が対象になる)


利益とは、売り上げから材料費や経費などを差し引いた、プラスの残金のことで、これ以上差し引くことが無い最終的の金額のこととしている。


商売の申請をしていない者は、商売を始めるときに必ず役所にて行うようにする。

商売を行い、利益がプラスになった時から、税金が発生するものとする。

(マイナスの時は、税は発生しない。お店に支払う逆納税も無い)


利益がプラスなのに税金を払っていない人は、自衛団からの制裁、凶悪な場合は商売の取り消しを行う。

(罰則などはまだ考えていないが、自衛団に任せる方針で考えている)


税金を適正に払っている人は、役所から有料商売と認められ、広告の配布や看板の設置を許可でき、役所から優良商売の証を発行する。(これにより、さらなる商売の繁盛に励むことが出来る。税収も増える)



「…といった感じでどうでしょうか。」

「ほ~。こういうことだったら、私もだいたい分る。うん、良いんじゃないかな。まあ、私も未経験の試みだから、まずはやってみようか。役所に提案してみよう。」

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