第5話 転生者がこの町にもたらした効果の一例ですよ。
今日は、私は仕事を休みにしている日だ。
役場の人たちも、日替わり交代で、数日の勤務したら、まる1日を休みにしているのだ。
ずっと毎日働きづめでは、息が詰まってしまうからな。
とはいっても、私に休みは必要ないのだがなあ。
役所にも、人によっては3日仕事で1日休みの人もいるし、7日行って2日休む人もいる。だからスケジュール表に出勤する日をチェック入れてもらっているのだ。
こんな私でも、部下の目もあって、みんなを休ませるので、私も同じように休む。名目上、そういうことにしてはあるのだが。
とりあえず、街並みの散策をすることに。仕事も休みも、やることは同じになってしまうなあ。家にいても、ボケッといるだけだから、外に出た方がいい。
あ、あー、実は、結婚していないのだ。子供もいない。
なんだか、仕事ばかりしていたものだから、相手に恵まれなかったのだなあ。
まあ、そんなことはいいじゃないか。
* * *
「・・・・、…?」
今日は、町がずいぶん騒がしいな。
新しい食べ物でも出来たのかな?
いつもに比べて、人が多い。
大通りじゃなく、市場の方か?
いや、市場でもない。見渡すと、他の小道まで、人通りが多い。
行き交う人を見ていると、町の人と服装がちょっと違う。
この町に、大都市から人が集まってきているのか?
「…、あ。」
そうだ。こういう時にこそ、ギルドだ。あそこに行けばいい。
この二つ先の角を曲がれば。
* * *
「今日は、先日来ていた転生者さん、それと以前に来ていた転生者さんが、依頼を片付けにいらしていましたね。」
やっぱり。転生者が来ていると、町の人数が増えるのか。
「その転生者さん、つい先ほど出ていったんですよ。途中でお会いしませんでしたか?」
「え?」
すれ違っていたのかもしれないと?
しかし、見た目、他の住民と、なんら変わるところはない。
「モンスター討伐っぽい旅人なんて、見なかったんだけどなあ。」
「あ、今回は違いますよ。音楽家の方々でしたねえ。」
「音楽?」
「酒場で、お客を呼んで盛り上げてほしいという依頼だったんですよ。それで数人の音楽家が集まってて、ケーキウォークの曲を披露してたんですって。どんな様子だったのか、私も見たかったですねえ。」
ケーキウォークというのは、最近大都市で流行っているという、ダンスミュージックのジャンルだそうで、軽快なリズムで軽く踊れる、酒場にはもってこいの音楽だ。私も、直接それを聴いたことは無かったが、話には聞いていた。楽しいから、一度は行ってみるといいと、誘われてはいるのだ。
「かなり夜遅くまで盛り上がってたそうで、酒場も宿も大繁盛だったそうですよ。さすがは転生者さんたちですね。大都市ではもう有名なバンドなんですって。」
なるほど。宿から出てきた客たちが、さっきのように町中に溢れていたということか。物の売り買い以外にも、こんな客寄せ方法があるのか。
「だから今度は、定期的に、その酒場に来てくれるんですって。ギルドを通さずに、直接お店からの依頼をもらったって言ってたわ。月に一度でも、そういうイベントがあると、そのお店も繁盛するわね。報酬金も、お店と音楽家が直接交渉するようになるんじゃないかしら。普段の2倍くらいの客の入りだったそうだから、報酬金もっと貰ってもいいわよね。」
やるな。さすが転生者、あなどれん。
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