第4話 この手数料制度ですが、転生者さん方にとっては。

さて。


そういった手数料システムは、この町の場合では、宿屋がもっとも金額が大きいのだ。酒場を併設している宿場が多いので、お酒にも手数料を取っているのだが、これには宿主には了承済みで、商工会が取り仕切っている。商工会では、お酒の取り扱いも行っているからだ。



貴族の方などレベルの高い人相手の、料金が高くてもいい宿は、最高級品の寝具を取り揃えている。これは役所が推奨したこともあるし、宿が独自に判断する場合もある。


反対に、お金をあまり持っていなくても泊まることに平気な方のようなレベルの宿だと、やはりそれ相応の建物と寝具になってしまう。宿代に合わせた寝具になってしまうのは仕方がないと、私もそう思っている。



しかしここがポイントで、わざと宿にもはっきりとレベル分けするように仕掛けている。

人間、向上心や欲求というモノはあるもので、比べた場合には、より良いものを求めるようになる。無理してでも良い宿に泊まるように頑張っていくもので、時が経つといつの間にか上級の宿に泊まれるようになる人も実際に現れる。




これが、転生者には、あまり当てはまらない場合がある。




転生者のほとんどは、いきなり高レベルで現れて、いきなり大金を稼ぐのだが、そういった稼ぎに相応しい宿などに、なかなか泊ってくれないことがある。

装具もさほど必要が無いくらいの体をしているので、なかなか商品を買ってくれないということもあった。



無欲なのか貪欲なのか、金を稼ぐだけ稼いで、持って行ってしまうのだ。そのまま他の地に行ってしまうという事例もよく聞いている。



正直言うと、転生者には、金を使ってほしいのだ。

ちょっと高めの宿に泊まってほしいし、ちょっと高めのお酒を呑んでいってほしいのだ。

そのおかげで、町が元気になるし、お金も回るようになる。

この町の特性なのかもしれないが、そうすることでこの町は大きくなっていったのだから。



*  *  *


「しかし、です。転生者って、ホントにいるんですか?」


ハムザくんが資料をまとめて、私のところにやってきたときの言葉だ。


「うむ~…」

実は、私も、まだ会ったことが無い。役所の中で事務仕事をしているのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。

ハムザくんも同じように感じているようで、

「日中は役所に来て仕事して、夜は家に帰って食事して寝る。こういう生活では、転生者とは会うきっかけが無いですよね。」

「そうなんだよなぁ…。宿屋か。酒場か。そういうところには来てるんだろうがなあ。」

と言ったところで、目についた先週の資料。


「…もしかして。たしか先週の登録者に2名いたんだっけ。その時の宿代は…?」

先週の資料の中から商工会の情報とギルドの情報を拾い出し、

「ハムザくん、頼まれてくれないかな。」

と、この2つの資料を出した。

「先週、ギルドに新規登録した転生者がいたんだ。えぇと、これと、これの二人かな。この二人が来てからの、商店街の売り上げに変化が無かったかどうかを調べてほしいんだ。ああ、人数が足りなければ、自衛団の人たちに応援してもらえるように連絡しておくから。いいかな?頼んだよ。」



ハムザくんの、迅速な仕事ぶりに、私は助けられているなあと感じた。次の日の夕方に、レポートを出してきてくれた。

結果的に、転生者が直接売り上げに貢献することは、あまり直結されていない。転生者は買い物はあまりしていないということになる。

しかし、転生者が現れる前と後で、後の方が町全体の売り上げが少し伸びている、ということなのだ。そして2~3日かけて、徐々に元に戻っているという。

理解できない。これはいったい、どういうことだろうか?


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