第8話 事件

 「トイレ行きたい」

 サトシは言った。

 「行っトイレ」

 サトシの母親が言った。

 サトシはトイレに行った。

 サトシはトイレに行って排泄をせず、代わりに、首を吊った。

 サトシはそれに失敗した。

 サトシの母親はそれを知り、ショックを受け、頬を濡らした。

 

 あれから十年後。


 サトシは家庭を持ち、元気ハツラツと過ごしている。

 いったいあの事件とは何だったんだろうか。あの首を吊るほどのしんどさに何の意味があったのだろうか。

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