第3話 人間のIQは見かけによらない

 冬のイオンモール。そこは暖房がいきとどき、なんとも心地の良い場所だ。休日になると家族連れが多い。僕はフードコートで漫画を読んでいた。隣の席には一組の家族がいた。父親、長男、次男と行った具合だ。父親は55歳ぐらい、長男は25歳ぐらい、次男は8歳だ。彼らの声は大きく、私の耳まで聞こえてくる。特に長男は相当なナルシストなようで、メガネを人差し指でクイと持ち上げ、次男に数学の難しい話を早口でしきりに語っていた。頭の良い人は早口な人が多いのかなと私は思った。次男ははじめはうんうんと聞いていたが、程なくして飽きてきたのか返事がそっけなくなってきた。長男はそれに気づかず話を拡張し人間のIQの話をしだした。それによると平均的な人間のIQは100前後らしい。まれにギフテッドと呼ばれるIQ130以上の人もいるらしい。長男はスマホでIQを調べられるからいまからしようと言った。三人はそれぞれのスマホでIQを測定した。それから彼らの話はこんな具合で進んだ。

 「父さんは105だった」父親は照れながら剥げた頭をかいていた。

 「まあそんなもんだ、父さんは」長男は笑いながら言った。

 すると次男がスマホを長男に見せた。

 「おっ、お前135もあるのか、すごいなさすが俺の弟だ」

 長男はちょっと焦っているように見えた。

 私は長男のIQはどれくらいだろうかと思った。

 すると長男の顔が青くなりだした。

 「ん?どうした?」と父親が言った。

 長男はスマホをテーブルの上に伏せて置いた。

 「お兄ちゃんどうしたの?」

 「いや、なんでもない」

 次男が長男のスマホを取って画面を見た。

 「えっ、お兄ちゃんIQ98だけ?」

 長男はヘラヘラ笑っていた。

 

 私はそれを見て、ナルシストモードよりヘラヘラモードのほうが人間らしくてかわいいなと思った。

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