第3話距離が近い

「ねぇってばぁっっ!!黙ってないで何とか言ってよ、たっくぅんっ!」

うぅぅ......そう言われても。

俺の腕に両腕をがっちり絡めながら胸を押し付け、声を荒らげる新條。

「......とぉー。声量を抑えてほしいぃなぁ......なんて──」

「ごめん......そうじゃなくてぇっ!」

即座に謝ったかと思えば、調子を戻し声を荒らげる彼女。

「近いってことっ!なっちゃんの距離......」

今の状況に堪えきれなくなり、なくなく白状した俺だった。

「もしかしなくても欲情してるの?可愛いたぁくぅ~んだなぁ~......って、冗談だって冗談。ごめんって!そんな顔しないでよぅ......」

表情がゆるみ、にやけながらからかってきた彼女だったが、俺の僅かな表情の変化に気付き謝りながら涙を浮かべる。

「泣かなくても......ごめん。泣かせるつもりなんて......」

ずるい......本当にずるいよ、新條キミは......

「わかってるくせに怖い顔するんだもん、たぁくん......」

涙でうるうるさせた上目遣いで見詰めてくる彼女。

「あぁ~もうぅ......からかってくるから軽く仕返ししただけなのにぃ~......調子狂わされっぱなしだよ、ここのところ。ずるいって......」

「えぇ~そんなことないよぅ~っ、たぁくんっ!」

ぷくぅっとリスのように頬を膨らまし、言い返してくる彼女。



下校した俺と彼女は、俺の自宅で──それも俺の自室のベッドでいちゃついていた。

はたから見れば、そう解釈する。

だが、実際は異なり──恋人同士のいちゃつきではなく、趣味の合う男女が遊んでいるだけのことだ。


秘密を共有する関係に至った俺らは、いつしか放課後に二人で遊ぶことになった。

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