第2話気にしない

午後の授業を終え、SHRも終えた教室は他クラスの生徒も混ざり、賑わいを感じる程に騒がしくなっていた。


人間が密集していると、息が浅くなっていく体質たちの俺は放課後になるやいな早々に教室を立ち退いた。


ぽつりぽつりと廊下に姿を現す生徒を見掛け始めた頃に、背後から駆け寄ってくる足音が近付いてくる。

足音は俺の隣で勢いをゆるめ、ぴったりと隣を歩く。

「今日はどうしやすぅ~旦那ぁ~っ?」

「知られたくないんでしょ、周りには。良いのか?」

隣を歩きながら昔の商売人のような媚びへつらう笑みを浮かべた新條に返事をせずに訊いた俺。

「今日くらいさぁー、良いっかなぁって。気にしないよぅ~私達になんてぇ~!連中みんなは浮かれてる真っ最中だからさぁ~っ!」

可愛さを残した声音で気だるげに返答した彼女。

「それもそうだね......新條に合わせるよ」

頷き、微笑を浮かべた俺は彼女の機嫌を損なわない返答を発した。


彼女──新條渚とは親睦会を終えた日から現在いまの関係が始まった。


それは思いもよらない──些細なきっかけにすぎない出来事ものだと俺は軽んじていた。



明日から──連休であるゴールデンウィークなのだ。

それ故、全校生徒は浮かれていた。




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