第6話 女神さま....
「あれ、30秒で着いちゃったよ...」
思ったより早く学校に着いたな。あれだけスピード出しても1分ちょいはかかると思っていたのだけど。
ちゃんと着陸する場所は人気のない場所を選び、すぐに【超着替】を使い、さっきまで着ていた服を着替える。どうやら着替えられる服はレイが所有する服に限るようだ。
「なるほど。こりゃ子犬モードと私服でそれぞれ用意しないといけないな」
レイは子犬の仮面を被った変装モードを勝手に子犬モードと名付けることにした。
洋服を分けるのは、子犬モードの時の服を覚えられる可能性があるからだ。今日子犬モードで着た服はもう私服では着れないだろう。
「おっと、もう行かなきゃ」
授業が始まるので、レイは急いで教室へと向かった。
教室へ向かうと、ちょうど教授が出席を取り始めた所だった。
「あぶねぇ...間に合った」
なんとか時間には間に合ったようだ。するとレイの後に続いて1人の女の子が息を切らして教室に走り込んできた。
「よ、よかった...間に合った...」
「お、マリア、おはよう。ギリギリだな、まあ俺もだけど」
「おはようレイ君。寝坊しちゃってね。てへへ」
同じ学科で幼稚園からの幼なじみの高橋マリアだ。幼稚園から小中高と見事にずっと同じ学校だ。なかなかの素晴らしいスタイルをお持ちで、艶やかな黒髪を豊かな胸の上くらいまで伸ばし、前髪は女子大生らしくアイロンでくるっと巻いてある。なんだかいい匂いがする。身長は俺より少し小さいくらいだ。え?俺の身長?聞いて驚け、162cmだ。ち、チビじゃないよ?ただ少し小さいだけだ。決してチビではない、はず。(チビです)
「聞いてよレイ君。マリア今朝ね、すっごいもの見ちゃったの」
俺の隣の席に座ったマリアはなにやらワクワクした顔つきで俺に話してきた。
マリアは自分のことを『マリア』と呼ぶ。ちなみに俺のことは『レイ君』と呼ぶ。幼稚園から何も変わっていない。
「あのね、聞いて驚いてね?なんと、マリアは空飛ぶ人間を目撃してしまったのです!これは大スクープの予感!」
「ぶほっ」
思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまった。
「どうしたの?ねえ凄いでしょ?これほんとなんだよ。レイ君、信じてくれるでしょ?」
「あ、ああ...信じるよ」
だってそれ俺だし。
「そしてその空飛ぶ人間がこの学校に向かっていくのも見てるんだ。つまり、あの人はこの学校の関係者の可能性が高いのです!マリアは生徒ではないかと推測しています!」
どこかの探偵の真似をしながらマリアは自慢げに言った。
どうやらマリアに子犬モードを見られてしまっていたらしい。まあ顔はバレてないから問題ないか。それに、万が一身バレしてもマリアならお願いすれば、口止めは可能だろうしな。
「そ、そうなのか。それにしても空飛ぶ人間かー、そりゃ凄いな。あはは」
誤魔化すの下手か、俺!
「うん!絶対に正体を突き止めててやるんだから!」
大丈夫だったようだ。拳を握りしめ、かなり意気込んでいる様子のマリア。正体を突き止める、か...。頑張って欲しい限りだ。
この日の授業は、世界の問題についてがメインだった。国連の職員が講師としてやってきて、貧困格差、環境問題、国際問題、治安悪化など、様々な内容が取り上げられていた。
「世界の問題、か.....」
授業が終わり、俺は1人呟いた。正直、ごく普通の大学生だった俺にとって世界の問題など、「そんなものがあるのか」と思う程度で、だからといって何か行動に移すようなことは一切なかった。
だけど今はどうだろう。俺は【超創造】という現実ではありえない夢のような力を手にしたのだ。この力を使えば、今起きているあらゆる問題を解決できるのではないだろうか。でもそれは果たして俺がやるべき事なのだろうか?
あれやこれやと色々考え込んでいると、
「大丈夫?レイ君。考え事?マリアでよかったら相談のるよ?」
ここに天使がいました。昔から思っていたが、マリアはかなり可愛い。小中高では、常に男子の【人気女子ランキング】でトップを争っていた。意味わからないくらいのモテっぷりだ。でもなぜだか、彼氏が出来たという話を聞いたことがない。何故だ?決して性格が悪いという訳では無い。むしろ良い。幼稚園からの付き合いの俺が言うのだから間違いない。異論は認めない。うーん、なせだろう。
「ああ大丈夫。ありがとう、マリア」
「う、うん!」
マリアがなんだか少し頬を赤く染めた気がしたが、気のせいだろう。
俺は世界の問題についてメモしてあるノートに、【マリアに彼氏が出来ない問題】を付け加えるのだった。
超普通の大学生、世界統べます。 もりもり森三 @112635679
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