第2話
「で?使わないのか坊主?」
山賊の頭ははなから俺の話を信じておらず、やっぱりなといった感じで言ってきた。
俺はそんな山賊の頭に何も答えず、ただニッコリとだけ笑った。
「ガハハ!坊主、どうせ本当は無いけど、面白い話をしたら助かるかもって話をしたんだろ?バレバレだぜ?」
山賊の頭は、あ~やれやれといった態度を取った。俺の周りで縛られている村人達も、こんな時でもロランが変なことを言うのは変わらないのかと、馬鹿にした顔をしていた。
だがその中で数人だけ、俺の事を真面目な顔で見ている人達が居た。それは俺の両親と、幼馴染の女の子だ。
村人の中で様子が違う俺の両親と幼馴染は目立ったらしく、山賊の頭は3人、いや2人に目を付けた。
「おーおー、別嬪さんとかわい子ちゃんじゃねぇか。なんだ?お前らはこの坊主の知り合いか?」
山賊の頭は、やはり俺の母と幼馴染に目を付けた。そしてずかずかと二人の元へ近づいて行く。
「ガハハ!坊主の家族か何かか?馬鹿な家族を持つと駄目だな!こうして俺みたいな奴に目を付けられちまう!全員手を付けずに売り飛ばそうと思っていたが気が変わったぜ!」
山賊の頭が二人に近づくにつれ、俺の父親がそこに割って入ろうとするが、俺は目線で合図しそれを停める。父親は「解った、お前を信じる」とばかりに頷き身を引いた。
やがて山賊の頭は幼馴染の方に近づき、周りに向けてこういった。
「今からこのお嬢ちゃんのまな板ショーだ!逆らったやつは同じ目に合わせるからな!よく見とけよ!」
周りにいた山賊の仲間達はそれを聞いて盛り上がり、にわかに騒ぎ出した。村人達の方は恐怖に引き攣った顔をしたり、好色そうな顔をしたりと様々だった。
やがて山賊の頭は、幼馴染の服を剥ぎ取ろうと服に手をかけようとする。
だが、山賊の頭の手が服に到達する前に、俺は大声で叫んだ。
「おーい!帽子を取ると実は天辺が禿げかけてるゴロゴさーん!」
「あぁん!?テメェ今なんつった!?」
俺の叫びに山賊の頭は物凄い反応を示した。そしてそんな山賊の頭の豹変っぷりを見て、周りで囃したてていた山賊の仲間達はポカーンとしていた。
俺はもう一度大声で叫ぶ!
「だから!実は禿げてるゴロゴさん!」
「テ・・・テメェェ!何で知ってやがる!というか名前も!」
山賊の頭は怒りながら俺の方へ近づいてきた。そんな山賊の頭に俺は話しかけた。
「いやね、実は話し忘れていたことがあるんだ」
「あぁっ!?最後の言葉かっ!?」
山賊の頭は俺の胸ぐらをつかみ、宙へと持ち上げる。だが俺は慌てずに話を続ける。
「まぁ最後と言えば最後かな。実はリプレイを使う条件はもう一つだけあってさ?それは、スキルの「クールタイム」なんだ」
「あぁ!?またあの作り話か!?」
「まぁ聞けよ。リプレイはな何時でも使えるって訳でも無くてな、使えるのは『前回使った時よりも後』しか使えないんだ。前回使った時より前なら発動しない。それが1秒前でも2秒前でも、だ」
「だからそれがどうしたってんだよっ!」
山賊の頭はイラつきが限度を超えたのか、腰にさしてあった剣を抜いた。しかしそれでも俺は話し続ける。
「逆に前回よりも後なら使えるんだ。1秒後でも1分後でも、な」
「あぁっ!?だから時間がどうしたよっ!」
「つまり時間稼ぎは終わりってことだよ!たった今クールタイムが明けたぜ!」
「うるせぇ!もういい死ね!」
遂に山賊の頭は剣を振りかぶった。
「次で最後にしてやる!首を洗って待っとけっ!『リプレイ』!!」
そして俺は次こそ終わりにすると誓い、やり直しを始めた・・・。
・
・
・
「・・・っは!」
俺は自分のベッドの上で飛び起き、一度周囲を見回した後に頭の中で念じる。
(メニュー)
すると目の前に一枚の半透明の板が出て来る。俺はその板の右下部を押した。
「4の月1の日・・・無事戻ったな」
続いて俺は板の『ステータス』と書かれた部分を押す。
名:ロラン
レベル:1
年齢:15
職業:村人
力:D
防:D
速:D
器:D
魔:D
スキル:
ユニークスキル:リプレイ
「ステータスも思った通りだな・・・。でも今頃になってイケルか不安になって来たな・・・。最後山賊の頭に大見え切ったけどイケるか・・・?」
一瞬俺の中に、大事な人だけ連れて逃げちまえよ、という悪魔のささやきが聞こえる。しかし・・・。
「いや駄目だ・・・。そうなるとあの人達は絶対残ると言うはずだ。流石にあの人達を残して俺だけ生き延びるのはダメだ!」
俺は悪魔のささやきを振り払う。そしてそんな事をしていると、部屋の扉が開き声をかけられた。
「ロランちゃん、朝よ・・・って珍しいわね?もう起きたのロランちゃん?」
「ロランちゃんはやめてくれってば・・・母さん・・・」
「あらそうね?ロランちゃ・・・ロランも今日で15歳だものね?」
「あぁ・・・今日で15歳だ・・・」
「ふふ、ネーアちゃんもようやくね?」
「いや・・・、だから俺はネーアには・・・」
「あらそうだ、ご飯よ?早く起きていらっしゃい?」
母・ルアナはそう言って部屋を出ていった。相変わらずな親だけど、やっぱり見捨てる事は絶対無理だと再確認できた。
「あぁ・・・本当なら今日から薔薇色・・・いやピンク色の生活になるはずだったのになぁ・・・」
俺はベッドから降り、元気になっている息子を見ながらそう言った。
「はぁ本当に・・・運は普通になってるんじゃないのかよ・・・。頼むから1週目の今日から、ずっと平和でいてほしかった・・・」
俺は天を仰ぎ呟く。そして1週目の今日の事を思い返した。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
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やり直せるスキルで人生ハッピー~そう思っていた時期が俺にもありました~ いぬまる @jokusukida
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