第24話 チンギスの大中軍の進軍2
ところで、ブハーラーには、隊商虐殺をそそのかした商人たちがおった。無論、チンギスは彼らの悪事は知らぬ。
ただ皮肉なのは、彼らがオトラルのイナルチュク・カンの下へ至らんとしたとき、さんざん邪魔した雨
――それが、その後、キジル・クム(赤い砂の意。半砂漠)の地にて、草を茂らせ、冬の今もなお大量の枯れ草となって残り、
――チンギスのブハーラーへの進軍を可能ならしめたことである。
冬ゆえに、ある程度、雪に水は頼ることができる。とはいえ、例年のキジル・クムの枯れ草ならば――隊商や中程度の部隊ならいざ知らず――チンギスの大中軍の通過は不可能であったろう。
更にいえば、この軍はまれにみる騎馬の大部隊というに留まらぬ。投石機部隊を含む輜重隊もおれば、多くの羊や山羊群もともなったと想われ、これらの足は自ずと遅い。ゆえに足早にキジル・クムを通り過ぎるという方策も取り得ず、その踏破は一層困難であったと想われる。
(補足 モンゴル侵攻時における、シルダリヤ川とアムダリヤ川の間の地の名は、一般的には、マーワラー・アンナフル(アラビア語)の語が用いられる。(トランスオクシアナはその英訳語)
ここでソグドの名を用いているのは、その方が日本人になじみがあると考えるゆえである。ソグド人(ゾロアスター教を信仰し、ソグド語を話す)は、この時には、とても少数となっておった。といって、その子孫が死に絶えつつあったという訳ではなく、イスラームに改宗し、ペルシア語やトルコ語を話すようになったのである)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます