(第2部 完)第8話:モンゴルの進軍5:『サイラームまでもう少し&到着。カクヨムさんでは脱線しなかったから、短かったね』

  人物紹介

 モンゴル側

チンギス・カン:モンゴル帝国の君主


ジョチ:チンギスと正妻ボルテの間の長子。


チャアダイ:同上の第2子


オゴデイ:同上の第3子


トゥルイ:同上の第4子。


イェスンゲ:次弟カサルの子供 (チンギスにとってはオイ)。


ボオルチュ:チンギス筆頭の家臣。アルラト氏族。四駿(馬)の一人。


シギ・クトク:チンギスの寵臣。戦場で拾われ正妻ボルテに育てられた。タタルの王族。


ジェベ:チンギスの臣。四狗の一人。ベスト氏族。


スベエテイ・バアトル:チンギスの臣。四狗の一人。ウリャンカイ氏族。


トクチャル:駙馬グレゲン。オンギラト氏族(正妻ボルテの一族)。

  人物紹介終わり



 フス・オルダを発し、タラスを経由し、更にその先のサイラームを目指して、モンゴル軍は進んでおった。チンギスは近衛隊ケシクテンを除いては、自らに近付くことを許しておらぬ。ゆえに挨拶に来る者も、その近しい将のみを連れてであり、護衛として伴って来た百人隊は近衛隊ケシクテンの外側に残した。


 その近衛隊ケシクテンの外側をチンギス直属の軍勢が囲んでおった。この部隊は百人隊長が率いておる。それゆえ史料には出て来ないが、いわば江戸幕府にての旗本・御家人の如くである。(ここでは、千人隊長が大名に当たる)


 更にその外側を二人の近侍の臣、ボオルチュとシギ・クトクの隊が囲んでおった。更にその外側を大中軍イェケ・ゴルの万人隊・千人隊が進軍しておった。4人の王子たちの軍勢は更にその外側を進んでおった。


 また通る地によっては、別経路を選択した。経路上の草を食べ尽くすを忌んだゆえであった。


 チンギスは、こたびの西征に、遠征可能な自軍のほとんどを伴っておった。大部隊としては、『金国との戦線を構えるムカリたちの隊』と『留守営を託した末弟のオッチギンの隊』を除くのみである。まずはホラズムに勝つことを優先したゆえであった。



 

 ムカリには金国との戦いについては、戦線が膠着しても良いから、無理な攻めは控えよとした。また改めて背反の意思を明確にした西夏の動きにも注意を払えとした。


 最悪は金国と西夏が手を結んで反撃に出ることであるが、そうなれば、モンゴル高原にしりぞき、末弟オッチギンと共に戦線を組み直せとした。


 更に必要ならば、我が方に、つまり西方に引き退き、我の帰還を待てと命じておった。ホラズムを滅ぼした後、金国も西夏も滅ぼしてくれようとして。




 サイラームはオトラルに近い。隊商でさえ四、五日、早馬なら一日で到達できる距離である。しかもおあつらえ向きにこの二つの地をアリス川が結んでおる(注)。つまり進軍して下さいと言わんばかりの地であった。


 チンギスはあえてそこで軍を止めた。大軍による圧力をかけて相手の動きを誘うと共に、ホラズム軍に関する情報収集に余念がなかった。それと共に敵の進軍に備えよと全軍に命じた。

 

 敵の急襲を警戒して、スベエテイには万人隊を授け前衛として先行展開させており、その後方に第二軍としてジェベに万人隊を授け布陣させておった。

 

 右翼にはイェスンゲ万人隊を付して、ジョチ率いる2万人隊と併せ、総計3万人隊が、左翼にはチャアダイとオゴデイが率いる総計4万人隊が、共に大きく広がって展開しておった。

 

 また後軍として、駙馬グレゲンのトクチャルに万人隊を授け、背後を固めさせた。


 各隊はチンギス直属軍を付して、増強されておった。


 そしてその中央にはチンギスの大中軍イェケ・ゴルが布陣した。


 当初の計画通り、この地での決戦を前提としたものであった。




 注 サイラームはタシュケントの北にあるシムケント近郊、その約14キロ東南東(カザフスタン国内)にあります。グーグルマップではsayramで検索できます。


 オトラルは、かつてはアリス川とシルダリヤの合流地の高台にありました。現在ではシルダリヤの北岸側に少し(約10キロほど)離れて、前記シムケントの西北西約120キロにあります。


 グーグルマップではオトラルトベで検索できます(トベは高台の意味です)。衛星写真で見えるいびつな台形が、オトラルの遺跡です。グーグルマップを見ますと、この両者の近くを流れる川が見えますので、これがアリス川と想われます。(途中で中間ほどにあるアルスという地の近くを通ります)


 またオトラルをウィキペディアで検索すると、かなりネタバレしますので、控えられた方が本作をより楽しめるとは想います。

  注の終わりです



後書きです

 ここまでお読みくださり、ありがとうございました。次話より第3部『仇(あだ)』となります。引き続きお楽しみいただけるならば、幸いです。

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