第4話 サウスダコタ入り
4日目。今日はモンタナ州から東へ走り、とうとうサウスダコタ州に入る日だ。昨日と同じく約7時間の走行予定である。
移動も4日目となれば、疲れもたまってくる。車の中は荒れる一方で、さすがに子供たちも退屈そうだ。見える景色は変わらず牧草地や森といった緑ばかり。なんとなく車内の空気もよどんでいる気がする。
ぽつぽつ現れる道路標識に探すのは、ガソリンスタンド、トイレ、子供たちが遊べそうな場所。
ちび3人を連れているので、毎日途中で1時間以上は休憩をとり体を伸ばし気分転換を図る。上の二人はおもちゃのある大きな店だと喜ぶし、さぶはお店の床でもどこでも自由にハイハイできればそれで満足。普段はお店の床をハイハイだなんてとんでもないけれど、この際、細かいことは言ってられない。車の中の平和が第一優先だ。
嬉々としてハイハイしまくるさぶ。
(さぶ。思いっきり体を動かして車の中では昼寝して。)
考えるのはそんなこと。
『旅の恥はかき捨て』なんて言葉も言い訳のように頭の中をよぎっていく。
この旅の間、昼ご飯は遊び場付きファーストフード店ですませた。バーガーを食べるなり、子供たちはよじ登ったり滑ったりと夢中になって体を動かしている。普段は見過ごすマクドナルドもこの旅の時はとてもありがたくキラキラ輝き私たちを招いているような気がしたものだ。
でも町もまばらなこの辺り田舎ではそんなお店すらなかなか見つからない。この日は昼食も休憩場所も探すのにとても苦労した。
そしてそんな中、立ち寄ったガソリンスタンドでの出来事が忘れられない。
そこはおばあちゃんが1人でやっている小さなさびれたガソリンスタンドだった。私がいつものように、ガソリンを入れるために前払いしようとレジへ行くと、私の顔をじーっと見て、「先にガソリンを入れてから、その分の代金を払うのよ。」と教えてくれた。
(え、それでいいの?)
私は一瞬、耳を疑った。
カリフォルニアに住んでいた時も、そしてここに来るまでも前払い以外でガソリンを入れたことはない。ここはガソリンの入れ逃げなんて考える人もいないくらいの平和な町なのかと、ものすごく感動した。
そして夕方、ついにサウスダコタ州へ入る。
どうやら泊まる町の近くにマウント・ラシュモアという岩に4人の大統領の顔が彫ってある場所があるらしい。これはサウスダコタ到着記念に写真を撮りに行くしかないだろう。
マウント・ラシュモアで4人の大統領のでっかい顔を見ながら
(とうとうサウスダコタに着いたんだ!)
と実感が湧いた。
サウスダコタ州に入ったものの、私たちが向かう引っ越し先は州の反対側。まだここから6、7時間の距離だ。
長く感じたこの旅も、明日はとうとう最終日である。
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